研究課題/領域番号 |
17K06515
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大野 健太郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (80571918)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンクリート / 応力推定 / 超音波速度変化率 / 相互相関 / 載荷方向 / 載荷軸直角方向 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果より,超音波到達初動部において無応力波形と各応力段階での波形の相互相関係数から得られる時間差を用いて超音波速度変化率を算出することで,超音波速度変化率がコンクリート応力に比例することがわかった。ただし,載荷軸方向ではコンクリート応力と比例するものの,載荷軸直角方向ではコンクリート応力に対して感度が低く,超音波速度変化率の変動が小さいことがわかった。 そこで,平成30年度の検討では,コンクリートの圧縮強度の違いがコンクリート応力と超音波速度変化率の関係に与える影響を確認するとともに,既設構造物での計測を考慮した測定方向について検討を行った。 具体的には,750×1200×250mmの版状コンクリート供試体内部にPC鋼棒を配置し,PC鋼棒による載荷および除荷を行い,コンクリート応力と超音波速度変化率の関係を調べた。なお,供試体は3体用意し,コンクリートの強度を3水準とした。実験では,各応力段階(0~10N/mm2)で載荷軸方向,載荷軸直角方向および載荷軸と45度方向の3方向で超音波計測を実施した。その結果,全てのコンクリート強度において載荷軸方向を伝搬する場合の超音波速度変化率はコンクリート応力と比例した。 次に,既設構造物での計測を念頭に,無応力時の超音波波形を使用せずに,各応力段階での超音波波形のみで応力推定が実施可能かを検討した。すなわち,コンクリート応力と比例関係にある載荷軸方向とコンクリートの応力変化に対し感度が低い載荷軸直角方向の超音波波形をそれぞれ抽出し,載荷軸直角方向に対する載荷軸方向の超音波波形の相互相関係数を算出し,超音波速度変化率を求めた。その結果,載荷軸直角方向を基準波形とし,載荷軸方向の波形を比較することで,コンクリート応力と超音波速度変化率は比例することがわかった。つまり,無応力時の超音波波形を用いずに応力推定が実施できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強度水準の異なるコンクリート供試体に対して,超音波速度変化率と作用応力の関係について整理できた。また,無応力時の超音波計測を必要としない新たな超音波速度変化率の算出方法を提案し,提案法の超音波速度変化率がコンクリート応力と比例することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
人工的にコンクリートの応力を増減させた場合において,本手法の有効性が確認された。今後は,クリープや乾燥収縮ひずみが混在する長期計測への本手法の適用性について検討を行う予定である。 また、2018年度に得られた知見を学会等で発表する予定である。
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