研究課題/領域番号 |
17K06519
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
岩月 栄治 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10278228)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルカリシリカ反応 / 抑制 / アルミイオン |
研究実績の概要 |
コンクリートの早期劣化現象であるアルカリシリカ反応の新たな対策として、膨張生の反応生成物を非膨張性にするためにはアルミイオンが関わることがこれまでの研究で明らかにした。このことを実際のモルタルやコンクリートに添加してアルミイオンが生成される物質として、アルカリ溶融処理した岩石粉と合成したカルシウムアルミネート鉱物の溶出試験を行い、さらにモルタルを用いた膨張抑制試験を実施した。2019年度は、以前に実施した溶融試験結果から、再度、鉱物を合成するなどして抑制効果が期待される物質を用いて実験を行った。 結果では、アルカリ溶融処理した岩石粉は、溶融処理に関わるアルカリが溶出する結果となり、モルタルによる実験では膨張が助長される結果となった。それに対してカルシウムアルミネート鉱物は、溶出試験においてはアルカリの溶出が若干あるものの、アルミイオンの溶出量が多いことが確認された。この結果から膨張を示すモデル材料である水ガラスカレットを用いたモルタルにカルシウムアルミネート鉱物を添加して抑制状況を測定したところ、一部の鉱物で膨張の抑制が得られた。 また、カルシウムアルミネート鉱物の添加量は、セメント質量に対して3~5%程度で膨張抑制が確認されており、少ない添加量で抑制できることが実験から得られたことから、抑制効果を有する物質として想定される。 以上から、今後は実際のコンクリートによる実験を反応性を有する天然骨材を用いて、膨張抑制効果を検討し、実用のための基礎データを得えることと、その抑制のメカニズムを明らかにするための分析を実施する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年度の実験においてアルカリシリカ反応を抑制する物質の選定に多くの時間を費やした。さらに、合成鉱物を作製したが、溶出試験やモルタルによる実験で、思わしくない結果となったため、さらに改良して鉱物を作製するための時間が必要になった。 2019年度は新たに作製した鉱物を用いて、溶出試験を実施したが、結果の検討から数度の 溶出試験を繰り返し行うことにも時間を費やした。その後、モルタルを用いた測定に移行しているが、研究代表者の業務や介護の発生によって、さらに研究が遅れることになり、2020年1月に研究期間の延長を申請し、2021年3月末まで延長が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の予定は、2019年度の結果から抑制効果が確認されたカルシウムアルミネート鉱物を添加したコンクリートを作製し、その膨張抑制効果を測定する。 コンクリートの材料には、反応性を有する天然骨材を数種類用いることによって、実際のアルカリシリカ反応を発生したうえでの抑制効果を測定するので、実用に向けた基礎データを得ることが可能と思われる。 なお、コンクリートの作製や鉱物の合成には、学生等の研究協力者や企業の研究者の協力を得ることを予定している。実験で得られた成果は学会等で公表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコンクリートの作成と測定、メカニズムの検討のための顕微鏡観察を行い、成果発表を行う予定である。 コンクリートの作成と測定には研究補助者(学生)の賃金として10万円を予定する。またメカニズムの検討のために実施する偏光顕微鏡と電子顕微鏡の消耗品の費用として7万円、成果発表のための投稿費として10万円を予定する。
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