研究課題/領域番号 |
17K06521
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
窪田 諭 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (60527430)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 河川維持管理 / 3次元点群データ / 情報プラットフォーム / データ統合 / UAV / レーザスキャナ |
研究実績の概要 |
本研究では、河川施設を3次元点群データに基づく3次元モデルによって維持管理し、災害時の対応を迅速に行うことを目的に、情報プラットフォームを構築し、実環境に適用する。情報プラットフォームでは、3次元形状と属性情報を統合して、3次元GISと現場業務で3次元位置認識を支援する点検システムを開発する。 本年度は、UAVによる3次元モデルの構築手法と4次元プロダクトモデルの確立を目指し、3次元点群データを基とする3次元モデルの構築手法の確立とともに、4次元プロダクトモデルを構築した。 「3次元点群データの計測と3次元モデルの構築」として、河川施設を対象にマルチコプタUAV(DJI社製Inspire2)による写真画像データと地上設置型レーザスキャナの計測を実施し、写真画像データから生成する3次元点群データとレーザスキャナによる3次元点群データから、点群編集ソフトを用いて植生などのノイズを除去する技術を開発した。堤防や高水敷などが橋梁や植生によって不可視となる箇所やUAVでは計測できない不可視部分については、両者の特性を踏まえて、データの統合技術を検討した。特に、両者の3次元位置座標を正確に特定するために、実空間に標定点を配置し、より精緻な3次元データを構築できた。 また、「4次元プロダクトモデルの構築」においては、既存のプロダクトモデルの構築法を整理するとともに、国土交通省の要領・基準類と大阪府岸和田土木事務所から借用する要領・基準類を基礎資料として情報を分析する。併せて、現場で業務を実施する河川管理者に対してインタビューを実施し、現状業務を分析して課題を抽出し、その課題解決策を提案した。4次元プロダクトモデルは、静的なモデル(クラス図)と動的なモデル(アクティビティ図およびシーケンス図)によって構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大阪府内の二級河川を対象に二箇所でUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と地上設置型レーザスキャナによる計測を実施し、河川施設の3次元点群データを取得することができた。UAVで計測した写真を基に、SfM(Structure from Motion)処理により点群データを生成し、地上設置型レーザスキャナによる点群データとの比較検証を行って両者のデータ特性を分析し、それぞれによる河川施設の可視・不可視箇所を把握した。これにより、高精度な地上設置型レーザスキャナによる点群データを基準に、UAVカメラによる点群データを補完的に扱い、両者の点群データを重畳処理することにより、河川空間全体の精緻な3次元モデルを構築することを可能にした。その際に、UAVカメラと地上設置型レーザスキャナによる点群データの特徴点を基準に統合することと、大量のデータを効率的に処理することが課題となるが、そのための一つの改善方策を示すことができた。3次元モデルの構築により、情報プラットフォームを開発するための基礎データを準備することができた。 河川維持管理の実務者を対象とするインタビューにより、現状の課題とその解決策を示すことができた。また、大阪府の河川点検要領を基に、情報プラットフォームで取り扱う情報項目を明らかにした。これらの結果はプロダクトモデルの基礎情報とし、UML(Unified Modeling Language)の表記法に基づくクラス図に構築した。プロダクトモデルでは、長期間の維持管理を対象とすることを考慮して、時間項を属性項目に取り入れた4次元モデルとした。 以上より、本研究は当初計画どおりにおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、河川情報プラットフォームの情報システム開発を実施する。初年度に構築した3次元モデルはシステムの基盤データとして利用し、プロダクトモデルは維持管理データベースの定義に利用する。システムは、3次元情報に共通する機能と河川維持管理に特化した機能で構成する。3次元点群データの処理および4次元表示技術においては、研究代表者が3次元CADエンジンを開発して得た知見を活かし、アルゴリズム作成とシステム実装を行う。 情報プラットフォームの設計と開発においては、災害時運用を想定して、発災期・復旧期に平常期のシステムを継続して利用する設計とする。平常時から管理図に道路諸元、点検、損傷履歴を加えた一元管理を行い、これらを3次元モデルから参照できるようにして、既存情報資産と3次元情報の流通環境を実現する。また、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスで必要な情報を登録し参照できるWebベースの仕様とし、事務所内のPCと現場のスマートデバイスを円滑に活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度には、当初購入予定であった計測用UAVと3次元点群データ解析用PCについては、既存の所有品により対応できた。また、国際学会が東アジア圏で実施され、そこでの発表となった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 次年度には、大規模な点群データを取り扱う情報システムを開発するために、システム開発・運用のためのサーバを購入するとともに、システム開発補助に係る学生謝金を使用する。また、国際学会および国内学会の旅費として使用する計画である。
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