研究課題/領域番号 |
17K06522
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
麓 隆行 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30315981)
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研究分担者 |
岩月 栄治 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10278228)
三方 康弘 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (60434784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | X線CT / 画像相関法 / DIC / PTV / コンクリート / 画像計測 / 圧縮強度試験 / アルカリ骨材反応 |
研究実績の概要 |
本年度は,近畿大学所有の多様環境対応型X線CTから得られた画像に対する3次元画像相関法(Degital Image Correlation: DIC)による計測方法の確立を目的に既知の移動量を有する3次元画像の移動量の計測を行い,計測誤差に影響を及ぼす機械的誤差の補正方法,適度な精度を有する計測が可能な計測対象領域の寸法を検討し,計測された移動量の精度確認を確認した. まず,研究協力者であるLund大学のStephen Hall准教授からDICに関する知識を提供いただいた.そして,近畿大学所有の装置で撮影された既知の移動量を持つ粒径の異なるジルコニア球を混入したモルタル供試体の画像データを用いて,Hall准教授の作成したプログラムを使用し,移動量の計測を実施した.装置が有する機械的誤差の補正を,既往の研究を参考に,固定点を用いた座標変換により実施した.計測対象領域の寸法は,領域寸法を変えた移動計測結果から1辺10 voxel以上であることを確認した.最後に,混入したジルコニアの粒子径が小さいとDICで得た移動量の標準偏差が小さくなり,0.3mmのジルコニア球を適量加えることで標準偏差0.005mm程度となることを確認した.DICでは一つの断面を全域にわたって計測できることから,DICによる計測は非常に有益であると考えられる.引き続き,近畿大学所有のX線CTを用いて圧縮応力下の粗骨材の異なるコンクリート供試体内部の変形計測を実施している. 長期変形計測のための準備も並行して実施した.研究分担者である大阪工業大学の三方准教授に反応性骨材を用いたコンクリートを作製頂き,X線CT画像の観察による長期養生中のひび割れの発生時期を確認した.また,麓が長期計測用の治具を考案し,研究分担者である愛知工業大学の岩月教授と共同で,次年度の計測に向けた供試体の打設も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コンクリート内部の局所的な収縮・膨張変形計測のためのX線CT画像計測法の開発を目的としている.そのため,本研究で明らかにするポイントは,画像相関法(DIC)によるX線CT画像解析法の開発,短期的,長期的な機械的誤差の補正方法の開発,そして代表的な収縮・膨張挙動の計測による適用性の検証である. 本年度は,画像相関法(DIC)による計測法の確立を目的に,最適なブロック寸法,機械的誤差の補正方法を選定し,既知の移動量を有する3次元画像による精度確認を行った.その結果,計測精度とともにPTV計測との違いなどが明らかになった.また,画像相関法で用いるブロックの大きさについても検討を加えることができた.さらに,圧縮応力下での供試体内部の変形計測を実施しつつ有り,その結果から計測方法の展望が確立できると考えられる.さらに,長期間保存した供試体の画像計測のための治具の準備に取り掛かっており,次年度の成果が期待できる.以上のことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
先にも示したように,本研究で明らかにするポイントは,画像相関法(DIC)によるX線CT画像解析法の開発,短期的,長期的な機械的誤差の補正方法の開発,そして代表的な収縮・膨張挙動の計測による適用性の検証である. 次年度は,短期的,長期的な機械的誤差の補正方法について検討する.そのために,平成29年度末に短期的な計測に関して,圧縮応力下のコンクリート供試体内部の変形計測を始めている.粗骨材を砕石,軽量骨材およびゴム骨材を用いることで,内部のひずみ分布の違いを計測することにしている.また,長期間的な計測に関して,アルカリ骨材反応を模擬したガラス骨材を混入したコンクリート供試体内部の変形計測を行う準備をしている.膨張までは定期的に長さ変化試験とX線CT撮影を並行して計測することで,長期的な変形計測を実施する.いずれも設置位置や撮影機構による機械的および人為的誤差の影響を確認し,それを取り除く方法を検討する必要がある.トライアンドエラーによる検討の必要が生じる可能性も有り,計測は早期に実施し始める予定である. また,X線CT装置の改良にも取り組む予定である.現状では短時間での撮影が必要であったため,画像にノイズが生じやすかった.昨年度のStephen Hall准教授との情報交換時に,装置の改良により,その誤差が取り除かれる可能性が出てきた.来年度は,目的とする計測精度向上のため,X線CT装置の改良についても検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度のHall准教授との情報交換時に,今後の計測精度に関わる装置改良に関する貴重な意見を頂いた.そのため,ワークステーションの選定と並行して,装置改良に関する検討を実施し,研究を効率的に進めるにあたって,より優先度の高い項目に費用を支出することにする予定である.また,国際的な共同研究を継続させるため,再度,スウェーデン Lund大学への出張も検討している.
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