研究課題/領域番号 |
17K06527
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
小室 雅人 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10270183)
|
研究分担者 |
栗橋 祐介 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (30414189)
岸 徳光 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 特任教授 (30153076)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | FRP補強 / RC部材 / 破壊形式 / 衝撃荷重載荷実験 |
研究実績の概要 |
偶発作用時における新素材繊維材を用いて補強された鉄筋コンクリート(RC)部材の動的(衝撃)挙動特性および終局状態を適切に評価可能な信頼性の高い解析手法の確立を最終目的として,本年度は以下の内容を実施した。 既往の新素材繊維材料で補強されたRC梁の形状寸法を基本として,信頼性の高い解析手法の確立のために重要となる衝撃荷重載荷実験を実施した。本年度は,シート補強量(目付量)を4種類(280, 415, 830, 1660 kg/m2)に変化させた全19体を対象に,鋼製重錘(質量:300 kg)を用いた衝撃荷重載荷実験および静的な耐荷性状を確認するための静載荷実験を実施した。衝撃荷重載荷実験に関しては,重錘の落下高さを漸増させる繰り返し衝撃荷重載荷実験および重錘を一度だけ落下させる単一衝撃荷重載荷実験の2種類を実施した。実験は全31ケース実施した。測定項目は,既往の研究と同様に,重錘衝撃力,支点反力,たわみ分布,FRP シートの軸方向ひずみ,および破壊性状とした。なお,破壊の推移は高速度カメラで撮影した。 その結果,1) 静載荷実験結果より,その破壊形式は既往の研究と同様に,上縁コンクリートが圧壊した後にシートが剥離する「曲げ圧壊型」と,圧壊前にシートが剥離して終局に至る「剥離破壊型」に分類されること,2) 衝撃荷重載荷実験結果より,シート補強RC梁の最大変位は,無補強RC梁と比較して15~35%程度抑制できること,3) 衝撃荷重を受けるRC梁の破壊形式は,シート補強量によって異なり,補強量が小さい場合(静載荷時には曲げ圧壊型に分類)には「シート破断」,大きい場合(静載荷時には剥離破壊型に分類)には「シート剥離」によって終局に至る傾向があること,および 4) 残留変位を考慮した絶対最大変位は,シート破断や剥離にかかわらず,累積入力エネルギーと線形関係にあること,などを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補強量の異なる全19体のRC梁を対象に,漸増繰り返し衝撃荷重載荷実験,単一衝撃荷重載荷実験および静載荷実験を実施し,その耐衝撃挙動の把握と耐衝撃性向上効果を実験的に確認した。また,既往の静載荷時に関する研究成果と同様に,シート補強量によって,破壊形式(シート破断もしくはシート剥離)が異なることを確認した。 シートの破壊形式を含めた,より精度の高い解析手法の確立に向けて重要となる貴重な実験データを多数収集できたことより,研究は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
同程度の補強量を有するRC梁に関して,提案の解析手法は補強材の形状や種類にかかわらず実験結果の動的挙動特性を精度よく再現可能であることが明らかになっている。一方で,提案解析手法の汎用性を高めるためには,異なる条件下での妥当性検証が重要となる。したがって,今後は提案解析手法のさらなる高精度化を目的に,本年度実施した補強量の異なるRC梁を対象に,繰り返し衝撃荷重載荷実験や単一衝撃荷重載荷実験に関する数値解析を実施し,提案の解析手法の妥当性検証を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:大学院生への謝金および旅費に,別予算(寄付金)を充当した。 使用計画:より精度の高い解析手法を確立するために,RC梁の製作費として使用する予定である。
|