研究課題/領域番号 |
17K06528
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
茂木 秀則 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80261882)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィルダム堤体の物性の変化 / NIOM法 |
研究実績の概要 |
H29年度は福島県のロックフィルダムにおける2011年東北地方太平洋沖地震ならびに福島県浜通り地震とその前後のS波の伝播時間の変化を検討した.その結果,(1)東北地方太平沖地震以前の上下流方向成分伝播時間0.1528sに対し,東北地方太平洋沖地震では0sから主要動となる100s付近まで伝播時間が漸増し,最大の伝播時間はおよそ1.5倍に達したこと,福島県浜通り地震においても同様の変化がみられたこと,(2)減衰比は東北地方太平洋沖地震において減衰比が最大で3~4%程度,福島県浜通り地震では最大で5%程度増加したこと,(3)剪断剛性率は本震前の700~720MPa程度から,東北地方太平洋沖地震では45%,福島県浜通り地震では30%程度まで低下したこと,(4)それ以降の小地震の解析から,ほぼ東北地方太平沖地震以前の物性値にほぼ回復していると見なせること,などを指摘した. また,監査廊と下流(ほぼ同一標高)の地震観測記録についても解析を行い,時間差と震源の方位と入射角の関係を検討した.また,東北地方太平沖地震,福島県浜通り地震の本震波形の解析では時間差が波形中に変化することを示し,破壊伝播や余震の影響を反映している可能性を指摘した.本研究の内容は地震工学会論文集に投稿中である. また,栃木のロックフィルダムの地震観測記録も解析中である.本ダムでは堤体の中央部分だけでなく,上下流法面などにも地震計が設置されており,強震時における堤体のより詳細な動的挙動が推定できるものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIOM解析による一基のロックフィルダム堤体の解析は順調に進み,成果を投稿中である.現在栃木県のロックフィルダムについて検討中である.本ダムは堤体の法面など多くの地震計が設置されており,堤体の部分による非線形挙動の違いなど,より踏み込んだ検討が可能になるものと考えている.本ダムに限定せず,今後ともNIOM解析による同様の検討を進めていく予定である.一方,堤体の地震計の設置位置が限られるため,堤体の動的挙動をより正確に推定するためには,数値解析との併用が有効である.このため,本研究において堤体を有限要素法,基礎地盤と境界要素法でモデル化した結合解法による応答解析プログラムを作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
ロックフィルダムの解析の実施:前述のダム以外にも広く地震記録を収集し,解析を予定である.また,H29年度に作成した応答計算プログラムを利用したインバージョン解析を行い,NIOM 解析によって得られた伝播時間や固有振動数などの情報を拘束条件として,観測記録を収集したダムの伝播速度(剪断剛性)と減衰定数の分布について調べる.なお,堤体内の複数の地震計において時刻の同期の取られていない記録も多く存在する.長期間の変化を検討するためには,これらの記録も用いて堤体の剛性を調べる必要がある.このための手法として,インバージョン解析の手法は有効であると考えられる.今後もさまざまなフィルダムのNIOM解析とインバージョン解析から堤体の動的物性を明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
微動計の計測計画が未定であったこと,前述の投稿論文の審査に時間がかかっていることなどから,未執行となってしまった.次年度は微動計センサーを導入し計測を実施する予定である.
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