研究実績の概要 |
荒砥沢ダム(宮城県栗原市)は岩手・宮城内陸地震(2008/6/14,M7.2)や東北地方太平洋沖地震(2011/3/11,M9.0)などの著しい強震動を受けており,特に,荒砥沢ダムのほぼ直下で発生した岩手・宮城内陸地震では監査廊L1では1Gを超える最大加速度が観測されている.本研究では2019年12月までの観測記録を解析し,地震波の伝播速度を調べるとともに,減衰定数の変化を検討した.その結果,(1)1997年1月から2001年10月までの地震記録の解析から得られた強震動以前の上区間のS波速度(上下流方向成分)は449m/s,P波速度(鉛直成分)993m/s,下区間ではそれぞれ608m/s,1,538m/sであること,(2)岩手・宮城内陸地震では主要動において上区間のS波速度は158m/sまで減少したこと,また,(3)その後の小地震では経過日数の対数にほぼ比例して伝播速度が増加し,ほぼ初期値まで回復するまで3年ないしそれ以上の時間を要すること,(4)2011年東北地方太平洋沖地震においても同様の変化がみられるものの,主要動直後に残留する伝播速度の低下は岩手宮城内陸地震の場合よりも小さく,堤体に東北地方太平洋沖地震の大きな影響はないものと判断されること,また,(5)岩手・宮城内陸地震の主要動において上区間のせん断弾性係数が400MPaから50MPa程度まで低下(最大せん断歪10^-3)しており,下区間と比べて顕著な変化を示すのに対して,減衰比は下区間で岩手・宮城内陸地震の主要動部において10%以上の増加を示し,上区間と比べて顕著な変化を示すことなどを指摘した.2021年度は英文誌(BSSA)への成果公表に注力し,査読意見に対応して数値モデルへの適用例の作成などの作業を行った(2022/1掲載).
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