研究実績の概要 |
全研究期間にて,PRC構造に混在する複雑な優劣相反因子(ひび割れ幅の拡大制限(優位因子),圧縮応力付与による部材の損傷(劣位因子))が複合的に作用した時の塩分浸透特性を明らかにする。 平成30年度に着手した研究は,「圧縮応力付与が塩分浸透特性に及ぼす影響を明らかにする研究」である。研究の目的は,コンクリートの塩分浸透特性に及ぼす圧縮応力付与の影響に関する知見を得ることである。平成30年度は,研究計画と平成29年度に実施した先行実験結果を踏まえ,圧縮応力付与条件について応力状態および圧縮強度比を追加し,電気泳動試験を実施した。追加状態と条件は,一つは(a)付与応力を圧縮強度比(f’c比)=0,10,20,30,40,50%の6条件で静的に応力保持する状態,もう一つは(b)付与応力をf’c比=0,10,20,30%の4条件で繰返し応力(100万回)を与えた後に応力開放した状態である。追加の理由として,応力状態の追加((a)静的応力状態)はプレストレスの本来の優位性の程度を得るためであり,圧縮強度比の追加((a)f’c比=0~50%,(b)f’c比=0~30%)は,実構造物に導入されるプレストレスの大きさの範囲内で塩分浸透特性に及ぼす影響を詳細に検討するためである。 電気泳動試験にて得られた成果は,以下の通りである。「静的応力保持する状態では,付与応力の増加に伴い実効拡散係数が低下する傾向,すなわちプレストレスの導入によって塩分浸透抵抗性が向上する傾向がある。付与応力はf’c比=40%をピークにそれ以上のf’c比では塩分浸透抵抗性が減少する。繰返し応力(100万回)を与えた後に応力を開放した状態では,f’c比の増加に伴い実効拡散係数が低下し,塩分浸透抵抗性が向上する傾向がある。」
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