研究実績の概要 |
コンクリートはセメント・水・骨材・混和材料などで構成される複合材料で,形成材料の種類・品質・構成割合だけでなく,施工方法・養生方法・材齢などの条件によりその圧縮強度が左右される。また,コンクリートの欠陥部と健全部における2つの音響学的特徴量の分布では,その差は極めて小さいけれども統計的意味を持ち有意差の有無より,例えば圧縮強度が異なる場合はその分布の仕方にも影響が現れる可能性が高いことが想定され,非接触音響探査法による遠距離非接触でコンクリートの強度が推定できる可能性が考えられる。 本研究では,非接触音響探査法によるコンクリート強度評価の可能性を検討するために,強度の異なる3種類のコンクリート供試体(16N/mm2, 30N/mm2, 45N/mm2)を作成し,打設後の経時変化の計測を非接触音響探査法等で行った。実験結果から,2つの音響特徴量である振動エネルギー比とスペクトルエントロピーの分布を用いることにより,強度の違いによる差を検出できる可能性があることが判明した。各供試体の弾性波速度と圧縮強度の間には比例関係が見られたが,各供試体間の弾性波速度差は最大で約500m/s程度であった。これは現在の日本で市販されているコンクリート部材の品質の高さを示してはいるが, 一方で過去に明確な差を検出した実例では1000m/s以上の速度差があったことから,明瞭な検出のためには弾性波速度差のもっと大きい供試体が必要であると推察された。すなわち,実際に経年変化したコンクリートを模擬した弾性波速度が遅い供試体製作が,本手法の検証のためには極めて重要である。そのためにはコンクリート供試体の製作に精通した土木建築技術者の協力が不可欠であるが,仮に弾性波速度差の大きい箇所だけでも,遠距離から本手法により非接触で検出できるようになれば,高所や遠方での点検作業の画期的な効率化が達成できると思われる。
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