研究課題/領域番号 |
17K06543
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
本田 秀行 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00110990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 近代木橋 / 経年 / 構造剛性 / 耐用年数 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、近代木橋の架設および修繕工事等の実績に関する各要因別によるデータを定量的に分析した。さらに、近代木橋に対する健全度調査を実施し、経年による劣化や定量的な健全度評価法および構造剛性の検討を行なった。 ①架設後30年が経過した石川県民森「かじか橋」(木製上路アーチ橋:石川県)の健全度 調査と動的調査を実施した。健全度調査では、各試験法に対する定量的な評価法(減点 法)を開発した。その結果、アーチ部材の腐朽度が50%であり、健全度として軽度な損 傷の評価になった。また、振動実験で得られた基本固有振動数に対する逆解析でヤング 係数の尺度によって構造剛性の減少率を検討した結果、30年の経過によって「かじか 橋」の構造剛性の減少率は56%低下していることが確認された。 ②架設後14年が経過した「かりこぼうず大橋」(木製トラス橋:宮崎県)の動的調査を実 施した。動的調査で得られた基本固有振動数に対する逆解析でヤング係数の尺度によっ て構造剛性の減少率を検討した結果、14年の経過によって「かりこぼうず大橋」の構造 剛性の減少率は20%低下していることが確認された。 ③架設後19年が経過した「みどり大橋」(木製ラーメン橋:長野県)の健全度調査と動的 調査を実施した。動的調査で得られた基本固有振動数に対する逆解析でヤング係数の尺 度によって構造剛性の減少率を検討した結果、19年の経過によって「みどり橋」の構造 剛性の減少率は約12%低下していることが確認された。 これらの調査で得た結果は、近代木橋の経年による構造剛性の実態を把握するための重要な基礎データになる。さらに、それらの基礎データを分析することによって、耐用年数に関係する要因とその細分割した項目の抽出および各項目の点数化の検討が可能となり、耐用年数の計算式を開発するための方向付けが可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近代木橋に対する耐用年数の推定式を開発するためには、経年による構造剛性の実態把握が必要になる。さらに、耐用年数に関係する要因とその細分割した項目の抽出および各項目の点数化も必要になるが、それらの検討には経年による構造剛性の実態に関する基礎データは必要になる。平成29年度に行った調査成果として、30年が経過した「かじか橋」に対する構造剛性の低下は56%、14年が経過した「かりこぼうず大橋」に対する構造剛性の低下は20%、19年が経過した「みどり橋」に対する構造剛性の低下は12%の重要なデータが得られ、耐用年数の推定式を検討する状況にある。さらに、次年度ではこれらのデータを分析すると共に、経年が異なる近代木橋の構造剛性の低減率に関するデータの集積を行なう。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、平成29年度の研究目的で収集した基礎データや分析内容を整理・精査する。そして、それらの成果を平成30年度の研究目的で実施する研究内容に統合化する。それらの成果に基づいて、本研究課題である近代木橋の経年による構造剛性の実態把握に基づく耐用年数の推定式の開発に対する統計処理による要因分析を検討する。
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