令和元年度は、近代木橋に対する健全度調査を実施し、経年による劣化や定量的な健全度評価法および構造剛性の検討を行なった。さらに、近代木橋の架設および修繕工事等の実績に関する各要因別によるデータの要因分析も行った。 ①架設後31年が経過した「かじか橋」(木製上路アーチ道路橋:石川県)の健全度調査と動的調査を実施した。健全度調査では目視点検も実施した。その結果、アーチ部材等の主構造で経年による顕著な劣化は見られ、腐朽菌の繁殖、ひび割れ、変色等の劣化が散見された。また、振動実験で得られた基本固有振動数に対する逆解析でヤング係数の尺度によって構造剛性の減少率を検討した結果、31年の経過によって「かじか橋」の構造剛性の低減率は約57%低下していることが確認された。 ②架設後17年が経過した「元気橋」(木製下路アーチ歩道橋:富山県)の動的調査を実施した。動的調査で得られた基本固有振動数に対する逆解析でヤング係数の尺度によって構造剛性の減少率を検討した結果、18年の経過によって「元気橋」の構造剛性の低減率は約25%低下していることが確認された。目視点検では経年によるアーチ部材や下弦材の端部に顕著な劣化が見られ、動的調査の結果を含めて本橋の経年による健全度は低い状況であると判断される。 ③これらの調査で得た結果および29年度や30年度で検討された基礎データを追加して、橋梁全体に対する鉛直の等価曲げ剛性を構造剛性と定義して、近代木橋の経年による実施的な劣化曲線の定式化を検討した。この結果、その劣化曲線と耐用年数の関係が定式化され、経過年数時での残存年数を推定する算定法を構築することが出来た。
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