研究課題/領域番号 |
17K06544
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
水野 英二 中部大学, 工学部, 教授 (80144129)
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研究分担者 |
伊藤 睦 中部大学, 工学部, 准教授 (00345927)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート柱 / 耐震性能 / 補修効果 / 軸方向鉄筋取り替え / 鉄筋の座屈性状 / 鉄筋の余剰耐力 / 三次元有限要素解析 / 二軸繰り返し載荷実験 |
研究実績の概要 |
平成30年度の課題は,【大きな損傷を受けたRC柱の材料的・構造的な補修効果の検討】であり,実施した内容および得られた成果を以下に記述する.平成29年度の「材料的な補修」に基づく研究成果を応用することにより,「材料・構造的な補修」を施したアンボンド型鋼繊維補強コンクリート(SFRC)柱の繰り返し二軸曲げ載荷下での耐震性能向上(補修効果の向上)を目指した.ここでは,「構造的な補修」としてコンクリートと軸方向鉄筋との間の付着を切ったアンボンド型の補修を採用した.実験的ならびに解析的な観点から補修効果に関する検討を行い,最終年度に実施する「大きな損傷を受けたRC柱に対する補修後の耐震性能向上の検証と最適な補修法の最終提案」へと繋げた.平成30年度は,研究協力者2名と大学院生1名も研究に従事した.研究内容および成果は以下のようである. (1)材料的・構造的な補修を施したRC柱の補修効果に関する実験的検証(水野) 平成29年度の研究成果に加え,「材料・構造的な補修」を施したアンボンド型SFRC柱の繰り返し二軸曲げ載荷実験を実施し,大きな損傷を受けたRC柱のポストピーク大変位領域にまで及ぶ補修効果を考察し,柱基部の塑性ヒンジ部分の合理的な補修法を検討した.ここでは,かぶりコンクリートの剥離状況,軸方向鉄筋の座屈長さ,座屈高さ,ライズ比(座屈高さ/座屈長さ),破断状況および耐荷特性を平成29年度の研究成果と比較した.最終年度に検討する「合理的な補修法の提案」に関する基礎的な資料を得た. (2)大きな損傷を受けるRC柱の解析的検証(水野・伊藤) 三次元有限要素解析を実施することにより,大きな損傷を受けるRC柱の塑性ヒンジ化部分でのコンクリートの劣化挙動および軸方向鉄筋の座屈挙動を実験結果と比較・考察した.最終年度に実施する,大きな損傷を受けたRC柱の補修効果に関する解析的な検証の基礎資料を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況について,自己点検による評価を行うと,以下の理由により,研究は「おおむね順調に進展している.」と判断する. 【1.座屈した軸方向鉄筋の取り替え基準に基づく補修を施したRC柱の耐震性能に関する実験的検証】 大きな損傷を受けたRC柱の軸方向鉄筋の余剰耐力に関するデータを整理・考察することにより,座屈した軸方向鉄筋の「取り替え基準」を提案した.さらに,ライズ比(座屈高さ/座屈長さ)-余剰耐力関係に基づいた「取り替え基準」を用いて,大きな損傷を受けたRC柱に対して異なる鉄筋補修を施し,RC補修柱の耐震性能(補修効果)について実験データを基に検証した.ここでは,1)重ね合わせ溶接により鉄筋補修を施した中間補強筋付きRC柱,2)突合せ溶接により全面的に鉄筋補修を施した中間補強筋付きRC柱およびボンド型RC柱,3)突合せ溶接により部分的に鉄筋補修を施したアンボンド型SFRC柱,の二方向繰り返し実験を実施することにより,各種要因の違いによる補修効果について多くの知見を得た. 【2.大きな損傷を受ける鉄筋コンクリート柱の三次元有限要素解析】 軸圧縮力下で大変位領域まで繰り返し載荷を受けるRC柱の変形挙動に関する解析的な検討を行った.ここでは,RC柱の一方向繰り返し曲げ載荷実験結果と三次元有限要素解析結果とを比較・考察することにより,大変位領域にまで及ぶRC柱内部のコンクリートおよび軸方向鉄筋の繰り返し変形挙動を精度良く解析的に再現する上で必要となるモデル化(コンクリートの圧縮強度の繰り返し劣化など)について詳細に検討した.本研究結果より,1)精度の高い変形挙動解析を実施するためには,コンクリートの繰り返し劣化および軸方向鉄筋の座屈の再現が重要となる,2)ひび割れ発生後のコンクリート圧縮強度の劣化特性を導入することにより,荷重-変位履歴曲線を概ね再現できる,ことが確認された.
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度(令和元年度)では,研究課題として【大きな損傷を受けたRC柱に対する補修後の耐震性能向上の検証と最適な補修法の最終提案】を全員により行う.3年間を通した研究成果のまとめを,以下の内容に対して行う. (1)多方向からの異なる載荷,例えば,繰り返し二軸曲げなどにより大きな損傷を受けたRC柱内部の座屈した軸方向鉄筋の「余剰耐力」を実験的および解析的な観点から整理・検討することにより,実寸大RC柱内部の軸方向鉄筋の取り替えの「要・不要」を特定する基準を策定する.また,軸方向鉄筋の取り替え方法(例えば,突き合わせ溶接または機械的な継ぎ手による方法など)を検討することにより,継ぎ手部を含めた軸方向鉄筋の破断を防止する方法を提案する. (2)大きく損傷を受けたコンクリート部分の補修方法(例えば,部分的なはつり・コンクリートの打設)も検討することにより,「材料的な補修」の観点より最大耐力とポストピーク領域での耐荷特性を最大限に修復・回復させるため方策を特定する.ここでは,ポストピーク大変位領域までのRC柱の靭性率およびエネルギー吸収能を向上させるという観点より,横拘束筋間隔と最適な材料特性との関係を明確にする. (3)最終的に,「材料的ならびに構造的な補修」の観点より補修部分をアンボンド型鋼繊維補強コンクリート化することにより,内部コンクリートの破壊および軸方向鉄筋の座屈・破断など大きな損傷を受けたRC柱に対して「最適な補修法」を特定・提案する. (4)上記(1)~(3)の研究成果を基に,想定外の大規模地震時においても大きな損傷を受けたRC柱に対して的確な補修を施すことにより合理的に「補修後の耐震性能を向上」させる補修プロセスを提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実験供試体の作製に100万円程度の支出を予定していたが,RC柱の三次元有限要素解析の実施を優先したため,令和元年度にこの予算を繰り越した.令和元年度は,本実験供試体作製費を実験データ処理費用(人件費),解析データ処理費と消耗品費に使用する予定である.
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