研究課題/領域番号 |
17K06548
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
高橋 一比古 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (30425748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疲労き裂 / 補修 / ストップホール / 斜面型くさび部材 / 適応くさび部材 / 耐疲労スマートペースト / くさび効果 |
研究実績の概要 |
各種構造物において疲労き裂が発見された場合には、応急処置としてき裂先端部にストップホールを設ける場合が多いが、単に孔を開けただけだとそこからき裂が再発してしまうこともあり、またボルト締めや添接板設置等、従来型のストップホール補強方法の適用が困難な場合も多い。そこで本研究では、くさび荷重の付与により孔端部の応力変動幅を抑制するくさび補強型ストップホールを提案し、FE解析によるくさび部材の最適化及び疲労試験による有効性の検証を行って、構造物の疲労き裂を片側からでも簡便かつ効果的に停止または抑制できる簡易補修法を構築する。 2019年度は、円孔端に予めノッチを加工した鋼製平板試験片及びくさび部材を用いた疲労試験を行い、ストップホールから再発き裂が発生・伝播した場合に対するくさび補強の有効性について検証した。また、耐疲労スマートペーストの適用によるき裂の進展抑制効果及び目視検出支援効果についても調べた。 その結果、適応くさび部材を用いると破断寿命が平均で12.4倍に延伸し、更に耐疲労スマートペーストを併用すると36.6倍にまで延伸することが判明したため、得られた結果や知見を論文にまとめて溶接学会に投稿した。 一方、実験時に行った斜面型くさび部材の装着作業を通じて、本方法を実構造物に適用する際には、くさび部材の位置決めを正確に行ったり、一度嵌め込んだくさび部材を安全に取り外すための機構や方法が不可欠であるとの結論に至り、専用の取り外し機構及び方法を新たに考案し、特許出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度はストップホール先端部からの再発き裂を模したスターターノッチ入りの鋼製試験片を用いたき裂伝播試験を行ったが、適応くさび部材を用いた場合や耐疲労スマートペーストを併用した場合において予想を上回る寿命延伸効果が現れ、全体として試験日程がずれ込んだ。このため、当初3年計画であった研究期間を1年間延長し、2019年度に予定していた変動荷重試験を2020年度に持ち越すこととした。2019年度の研究成果は論文にまとめて2020年4月に溶接学会論文集に投稿しており、くさび補強型ストップホールの基本原理に関する特許査定や取り外し機構及び方法に関する新規特許出願も含め、確実に成果が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度に引き続き円孔端に予めスターターノッチを加工した鋼製平板試験及び斜面型くさび部材を用いて、変動荷重下における疲労き裂進展試験を行い、再発き裂に変動荷重が作用する場合に対するくさび補強の有効性について検証する予定である。また、溶接学会に投稿した論文については、掲載に向けて適宜査読修正を行う予定である。 そのほかにも、実験及び解析で得られたデータや新たな知見について、随時研究発表や論文投稿、特許出願等を行っていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の成果を纏めて溶接学会に論文投稿したが、実際の掲載は2020年度となるため、研究期間を1年延長した上で論文掲載料の予算を繰り越した。 繰り越し分は、上記掲載料および追加実験用の消耗品費等に使用する予定である。
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