2016年熊本地震では熊本城が甚大な被害を受けたが,それらの被害箇所は1889年明治熊本地震での被災箇所と多くが重なっている。同じ箇所が繰り返し被災する要因として,潜在断層(弱層)により基盤岩の深度が急変していることで,地表面地震動が局所的に増幅され,弱層に沿う箇所の被害が大きくなったことが考えられる。 本研究は,熊本城内での弱層となる基盤岩の分布が急変する箇所およびその深度を,物理探査である表面波探査と常時微動測定を行うことで明らかにするものである。 本研究では,2016年熊本地震での熊本城石垣の被災要因として,γ線測定の結果から表層地質構造の弱線部(地層の急変部)にあたるではと想定し,その検証のために,物理探査手法である表面波探査と常時微動測定を実施した。 本研究の結果,表層部の軟弱層厚に狭い範囲においても若干の変化が見られ,岩盤程度の硬質な地層が検出された箇所はあるものの,想定した弱線上において地層が急変する箇所は見られなかった。このように,研究の発端としてγ線測定の結果から推測されていた熊本城内の石垣崩壊部での基盤岩深度の急変は,本研究による表面波探査および常時微動測定の結果からは確認することができなかった。が,何を表しているのかは今後の研究課題として残っている。 本研究の成果により,盛土層厚が厚い(基盤岩深度が深い)箇所では,スペクトルの増幅率が大きくなる傾向がみられており,また,同じ盛土層であってもS波速度やスペクトルの増幅率に違いがみられていることから,この違いを詳細に検討していくことで,地震による石垣崩壊要因を検証することが可能になるとなる。さらに,本研究で採用した物理探査手法は,被災した城郭内での地盤調査手法として極めて有効であることを,実証できたと考えている。
|