研究課題/領域番号 |
17K06558
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
柴 錦春 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20284614)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重合ベントナイト / GCLの自己修復能力 / 高濃度陽イオン溶液 / 強酸・強アルカリ性溶液 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究は主に重合ベントナイト(PB)を用いるジオシンセティックスクレイライナー(PB-GCL)の遮水性能及び損傷がある場合の自己修復能力について、試験的に検討した。比較検討のため、天然ベントナイトを用いたGCL(UB-GCL)に対して、同様な試験を実施した。 (1)高濃度陽イオン溶液 試験した溶液は:蒸留水、0.1Mと0.6M のNaClおよび0.1Mと0.6MのCaCl2溶液であった。何れの溶液においても、損傷がないPB-GCLの透水係数は損傷がないUB-GCLの透水係数より低い。0.6MのCaCl2溶液の場合、PB-GCLの透水係数はUB-GCLの約0.7倍であった。直径20mmの損傷穴がある場合、蒸留水だとPB-GCLとUB-GCLともに損傷穴が自己修復できたが、0.6MのCaCl2溶液の場合、UB-GCLの自己修復率( α= A1/A;A1は修復された損傷穴の面積;Aは損傷穴の全面積)はゼロだったが、PB-GCLの自己修復率は約76%であった。これらの結果により、高価・高濃度陽イオン溶液の場合、PB-GCLはUB-GCLより優れたバリア性能があることが分かった。 (2)強酸・強アルカリ性溶液 蒸留水にHClまたはNaOHを加えて、溶液のpH値を1-13まで調整して、PB-GCLとUB-GCLの漏水試験を実施した。試験結果により、pHが3-11の範囲ではPB-GClとUB-GCLは概ね似ている遮水性能を有している。強酸(pH<3)・強アルカリ性(pH>11)溶液の場合、PB-GCLの透水係数はUB-GCLの約1/10であった。直径57.3 mmの損傷穴に対して、PB-GCLはすべての溶液において自己修復率αは100%だった。UB-GCLでは、pH = 1の溶液の場合、α = 75%、pH = 13の場合、α = 85%であった。特に強アルカリ性溶液の場合、PB-GCLの透水係数は蒸留水の場合より低かった。そのメカニズムは、用いたポリマーは表面に陰イオンを持っており、強アルカリ性溶液中OH-1イオン濃度の増加によって、PB粒子間の反発力が増強され、膨張性が増えたと推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究は、重合ベントナイト(PB)を用いたジオシンセティックスクレイライナー(PB-GCL)と天然ベントナイトを用いたGCL(UB-GCL)による漏水試験の結果より、PB-GCLの遮水性能及び損傷がある場合の自己修復能力を検討・評価した。研究はほぼ計画通り実施されたので、概ね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)PB-GCLの遮水性能及び自己修復能力における上載荷重の影響について、モデル試験により検討する。 (2)試験結果に基づき、電気二重層理論、イオン交換理論と空洞収縮理論を利用して、PB自由膨張率(FSI)、上載圧力(p')、圧縮指数(Cc)と膨張指数(Cs)、非排水せん断強度(Su)等を基本パラメーターとするPB-GCLの透水性能、自己修復能力を予測する理論体系と方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:初年度(2017年)でベントナイトを重合する設備が別の予算で整備したので、一部の予算は2018年に繰り越した。2018年度のGCLの漏水試験も既存装置を使ったので、来年度に繰り越し予算が生じた。
計画:2019年度のGCLの漏水試験において、高い拘束圧をかける装置を作って研究を進める。
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