【研究目的】本研究では,一般に油汚染浄化処理後にも残留する油汚染地盤を対象に新しい浄化工法を提案することを目的として,超音波による乳化現象に着目し,地盤材料内部の乳化した油の量の測定法と浄化効率の評価について検討してきた.今年度は,独自に開発した超音波振動浄化実験装置とマイクロX線CTを用いて対象試料の内部構造を可視化し,浄化状況を定性的に評価した. 【材料と手法】試料には,平均粒径が1㎜以上の鹿島珪砂,破砕ガラスビーズ,いわき珪砂3号を使用した.これまでに実施してきた超音波による浄化実験は,超音波を一定時間照射した後に超音波照射を止めて流体を注入する方法であった.ここで限界乳化量を考慮し,乳化溶媒を供給し続ける場合とそうでない場合を比較することを検討することにした.なお超音波発生装置には,QUAVA mini(株式会社 カイジョー)を使用した. 【実験結果】乳化溶媒であるヨウ化カリウム水溶液に対する油の体積比について超音波照射中に乳化溶媒の供給がある条件(実験B)では、溶媒の供給がないという条件(実験A)よりも大きい値を示していることが分かった.溶媒を供給する場合,乳化液が限界溶解濃度に達する前に回収された為,乳化溶媒の単位体積当たりの回収量が小さい値を示したと考えられる.しかし、累積回収量を評価すると実験Bは,実験Aよりも約4.1倍の回収量が期待されることがわかった.次に,マイクロX線CTを用いて画像解析したところ,実験Aの画像から,油のBlob数をカウントし8.33%の減少率を確認した.一方,実験Bでは実験Aの3倍の減少率(30.35%)を確認した. 【まとめ】実験Bでは乳化溶媒の単位体積当たりの油の乳化量が小さいことが示唆された.この結果は,乳化溶媒の調整することで,残留油と乳化溶媒が十分に乳化する環境を与えることで実験Bの結果はさらに改善されるが示唆している.
|