津波堆積物分別土砂の有効利用に向けた環境安全性の評価手法の確立が求められている。本研究では、透水性が低い分別土砂にも適用できる定動水勾配条件のカラム試験装置を試作し、従来の定流量条件のカラム試験法との比較試験を通じて、分別土砂地盤に含まれる重金属等の有害物質の”環境受容性”を判断するための試験方法の開発を目指すものである。本研究では、先ず始めに、締固め土の透水性を支配する因子の一つである細粒分含有率と粘土含有率に着目し、粘土と砂を混合した人工分別土砂にミョウバンを添加し、ミョウバンを有害物質と見立ててカラム通水試験を行い、溶出液の電気伝導度の変化を測定してミョウバンの溶出特性を評価した。通水速度の変化に伴うミョウバンの溶出特性は、従来型のカラム試験機と同様な結果が得られ、通水速度が速くなるに従って、電気伝導率の低下量が減少する傾向にあり、土壌と溶媒の接触時間が短くなることが影響していることが示唆された。土壌と溶媒の接触時間の関係については、締固め度を高めて透水性が低下した土壌においても同様の傾向を示すことが確認された。次に、ミョウバン水溶液、NaCl水溶液に対して通水速度および通水方法の設定を変えた破過試験を実施し、濃度分布理論解を適用して吸着および脱離過程における移流分散特性にかかわる地盤環境パラメーター(分散係数・縦分散長・遅延係数)を求めた。この結果、破過曲線の形状は通水方法の違いに少なからず影響を受け、定動水勾配条件のカラム試験においては、通水時間とともに溶出液量の低下が認められるなど、安定した地盤環境パラメーターを得ることができなかった。これには、土壌の電化特性とイオンの吸着状況により土壌の構造の変化が考えられ、定動水勾配条件下で所定期間を設けて試験を完了するためには土質の適用範囲を限定する必要が示唆された。
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