本研究目的は,熱による浮力効果を格子ボルツマン法モデルに導入し,日中の都市大気境界層再現計算を実施することで,大気混合層と都市街区の関係性について検討するものである.これについて,昨年度までに温度の移流拡散を差分法で記述し,それと格子ボルツマン法をブジネスク近似でつなぎ,定性的に浮力効果が働くことを確認した.また,現地観測を実施し,本計算モデルの比較検証のための都市街区気象観測データの取得を行った.格子ボルツマン法の計算過程における外力の付加方法を変更することで、境界層内の温度上昇や,境界層高度の発達速度などについて、大気境界層の現地観測データ及び,Navier-Stokes式の差分法に基づくLESモデルの結果と概ね一致することを確認した。その他に東京都臨海部における19.6km×4.8km×2kmの領域を格子解像度2mで解像した大規模計算などを行ってきた。しかしながら、これまでの計算結果かから、特に壁面や道路面近傍において、非現実的な高温領域が現れていたことが分かった。これらは空間平均すると見えなくなるが、街区の局所的な温度環境を評価するためには致命的である。そこで本年度は、壁関数の導入により熱フラックスに関連する地表面境界条件の改善を行った。Navier-Stokes型のモデルと同様に壁関数を導入した。基本的にはスリップ条件で分布関数の時間発展を計算し、そこから地表面抵抗を計算し、それによる速度欠損を計算する。格子ボルツマン法では速度欠損量を各速度分布関数に適切に分配する必要がある。これを実装したことで、地表面近傍の速度表現が改善され、それにより非現実的な温度上昇を解消した。
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