研究課題/領域番号 |
17K06573
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
横嶋 哲 静岡大学, 工学部, 准教授 (80432194)
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研究分担者 |
音田 慎一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50402970)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 粒子混相流 / 乱流シミュレーション / 埋め込み境界法 / バセット履歴力 / レベルセット法 / VOF法 |
研究実績の概要 |
前年度までに、「(i)移動床流れのベースを捉えるための、巨視的土砂輸送モデルに基づく非定常3次元乱流シミュレータの開発」については一定の目処が立ったため、今年度は(ii)開水路流れの水面変形・変動をより精度良く捉えるための、高精度界面捕獲法の実装と基本精度検証、(iii)浮遊砂の高精度予測を実現する上で有力な手法である、いわゆるMaxey-Riley方程式(質点近似に基づく微小粒子の個別追跡)に含まれるバセット履歴力の高効率・高精度計算法の実装と基本精度検証、(iv)掃流砂による移動床流れ予測法の実装と基本性能評価、を主に行った。(ii)については、これまで主にレベルセット法に限定して検討を進めてきたが、質量保存性に関して優位性を有するVOF(volume of fluid)法も新たに検討対象に含め、より広い範囲からコスト・パフォーマンスに優れた界面追跡法を追求した。VOF法の範疇では実装が比較的容易なCICSAM法の基本性能評価を行い、十分に小さい時間刻み幅を使用する限りは、VOF-CICSAM法はかなり高精度な予測結果を与えることを確認した。(iii)については、前年までに基本性能評価を済ませた、バセット履歴力の近似法を用いて一様等方乱流中の粒子のクラスタ形成に関する数値実験を行い、水中の土砂粒子の振る舞いにはバセット履歴力の影響が無視し得ず、バセット履歴力の存在によって粒子の偏分布が和らぐ傾向が明確に確認された。(iv)については、反砂堆の形成過程に関する数値予測を行い、対応する水理実験結果と概ね一致する結果を得た。以上の成果を上手く融合することで、、直交直線格子上で時々刻々と変形する移動床・自由表面形状を効率的かつ精度良く表現することが可能となり、移動床流れ解析の計算効率を大きく改善することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(ii)高精度界面追跡法、および(iii)高精度・高効率なバセット履歴力計算法、の両者の実装と基本性能評価については、昨年度に続いて順調に進展した。(ii)では、VOF法の中でも実装が比較的容易なCICSAM法の基本性能評価を行い、時間刻みを小さく与える限り、精度良く界面挙動を補足できることが確かめられた。VOF法はレベルセット法のように定期的な関数の再初期化操作が不要なため、VOF-CICSAM法はコスト・パフォーマンスの観点で良い選択肢と言える。(iii)では、比重が3程度の水中の微小砂粒子の挙動を正確に再現するためには、バセット履歴力の正確な取り扱いが重要となることを明確に示すなど、重要な知見を新たに獲得した。昨年度まで進展にやや遅れが見られた、(iv)掃流砂による移動床流れ予測法の実装と基本性能評価についても、反砂堆の形成を伴う移動床水理実験結果を概ね再現できることが確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が目指す、高精度・高効率な巨視的移動床シミュレータの構築に関して、個々の構成要素の実装・基本性能評価は順調に進展している。今後は、これらの要素を組み合わせた場合に、複合的にも期待する機能を発揮できるかどうかを、適切な問題に適用して、検証する必要がある。併せて、基本的な移動床流れへの微視的/full-resolvedな数値シミュレーションの適用も行い、信頼性が高く実験観測では獲得が困難/不可能なデータを用いて、流砂現象に対する根本的理解を深めるとともに、巨視的モデルの性能評価や改良に供するデータベースを整備することも重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度に予定外の共同研究費を獲得したため、一部の支出先が本科研費補助金の用途と被った結果、剰余が生じた。今年度にその剰余の一部を用いて、本研究で利用している大型計算機@京都大学学術情報メディアセンターの性能を予定よりも高めることができた。今回の剰余も来年度に同様に大型計算機の利用資源の増強に活用し、研究計画の効率的実施に役立てる予定である。
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