本研究の目的は,礫河川が抱える河床環境上の問題発生要因を分析するため,平水から中小出水まで通年で,地点毎に異なる土砂移動や河床近傍の乱流を,素過程から定量的かつ緻密に把握する新たな計測技術を確立することである. 平成31年/令和1年度は,前年度に開発した計測システムを用いて,5月に北海道・札内川で実施されたフラッシュ放流に合わせた河道掘削・土砂還元について現地調査を行った.河床近傍での圧力変動および土砂移動について,二地点でデータが取得され,そのデータが分析され,同様の水深・河床勾配・河床材料となっている二地点でも,乱流や土砂移動が大きく異なることが確認された.一地点では,土砂移動に伴うと思われる,圧力変動データのノイズが確認された. 現地調査で計測された圧力変動データのノイズの発生要因の検討のため,室内実験を行った.記録波形の特徴からノイズは高周期で散発的な圧力変動であることが示唆されたため,可聴域程度の音波(水中音)が圧力変動の計測データにどのように記録されるかを確認した.また,圧力センサ近傍で土砂衝突を発生させ,記録されて圧力変動データの検討も行った.土砂移動にともなって圧力変動データにノイズが生じうること,高周波の圧力変動や,土砂衝突が,記録される圧力データにどのように表れるかが確認された.低周波通過フィルターの使用により,ノイズを除去できることを確認し,ノイズを除去することで,乱流により生じた圧力変動の統計量を算出することができた. 礫河川の土砂移動・河床近傍流れ・水温の通年・多地点をモニタリングできる実用的な技術を開発する目的はおおむね達成できた.
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