研究課題/領域番号 |
17K06576
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
入江 政安 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00379116)
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研究分担者 |
今村 正裕 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 上席 (50371498)
石塚 正秀 香川大学, 創造工学部, 准教授 (50324992)
中谷 祐介 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20635164)
田中 耕司 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50817385)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | データ同化 / 流出解析 / 多項式カオス展開 / 分布型流出モデル / 流動水質モデル |
研究実績の概要 |
本課題は湖沼,河川,沿岸域の3種類の水域を対象としている.湖沼における解析では,水温分布や水質動態の再現精度が高いと考えられる非構造格子3次元流動モデルの導入を図った.合わせて,湖沼の例として,霞ヶ浦における底層貧酸素化とその要因の把握するため,文献調査および現地観測データの解析を行った.湖奥部では夏季に低温の河川出水が湖内底部に供給されている構造を明らかにした. 河川においては分布型流出モデルによる洪水流出解析において4次元変分法によるパラメータ推定法の開発を行った.前年度は兵庫県の揖保川を対象に実施していたが,本年度はより集水面積の大きい兵庫県の加古川を追加で検討開始し,出水時の再現性低下要因を探り,離散化の見直しやモデルの修正を行った.揖保川の出水の再現性を向上させるためのモデルパラメータ推定として,グリッドごとの修正より,小流域に区切って修正した方が,同化対象のデータがある水位観測点に近いところでの過剰な修正が避けられることなど,諸々の知見を得た.さらに,多項式カオス展開によるパラメータ修正法の開発も行い,感度解析の結果,感度の大きいパラメータに対し修正を行い,再現性の向上を得た.修正すべきパラメータは各水位観測地点によって異なることを明らかにした. 沿岸域での流動水質モデルの改良においては,多種の藻類や新生堆積物の考慮を行うとともに,多項式カオス展開による水質モデル内モデルパラメータの修正を行った.パラメータ推定値を用いることで,春季の表層におけるブルームの再現性が向上するとともに,夏季の表層において過大に計算されていたクロロフィル濃度を減少させることができた.また,水中における有機物の分解速度が,季節的な貧酸素水塊の消長に沿うように増減することで,貧酸素化の強度と貧酸素水塊の規模がより観測値に近付き,中底層における溶存酸素濃度の再現性が向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
湖沼モデルの開発において若干の遅れを感じるものの,3つの異なる水域を同時に進める研究としては概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たることから,湖沼においてはモデルの開発を精力的に進める.他の研究協力者とも意見交換する中で,当初計画に入れていた淡水赤潮のモデルによる再現性向上だけでなく,アオコおよび貧酸素化のモデルの再現性向上も実務レベルで必要であることが分かっており,これら3つの水質項目の再現性向上を見据えた開発方針であるべきと考えている.河川では,現状出水予測に留まっており,熱や栄養塩の物質輸送の議論まで進んではいない.しかし,出水の再現性はこれらの物質輸送の肝をなすものであるため,パラメータ推定法の技術改良に注力するとともに,物質輸送に関係した資料の収集と予測可能性の議論を進める.沿岸域ではこれまで実施してきた多項式カオス展開およびアンサンブルカルマンフィルタによる水質予測の向上について成果をとりまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
主に,計画時に予定していた計算機の購入を機関外の大型計算機への利用申請により賄えたため,次年度使用額が生じている.次年度は最終年度にあたり,計算量の増加ととりまとめのためのデータ解析の必要性から,計算機の購入を予定している.また,研究成果の公表のために使用する.
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