津波・高潮などの長波数値計算では,水深が浅くなるにつれて複雑になる現象を精度よく再現するため,空間解像度の異なる複数の領域に対して同時進行的に計算するネスティング手法が一般的である.しかし,この手法は反射波や散乱波による数値誤差および計算不安定性の問題とともに,大きな計算負荷と計算時間を要する欠点がある.適合格子細分化は,高い空間分解能を必要とする場所だけの格子を細分化するので,計算精度を向上しつつ計算効率を上げ,計算時間を大幅に短縮できる. そこで、本研究の目的は,適合格子細分化を用い,津波・高潮の災害外力発生部から陸上遡上および沿岸・河川下流部における複雑地形や詳細構造物を考慮した氾濫計算まで一括で計算できる,シームレス氾濫モデルを開発し,津波・高潮数値計算における高精度化・高効率化を目指すものである. 研究計画としては、適合格子細分化による沿岸・河口部における津波変化特性計算(具体的には、円錐形の島における津波遡上数値実験と津波の河川遡上および越流数値実験)、2013年台風30号Haiyanによる高潮計算(台風による気象外力はWRFモデルを用い台風シミュレーションを行い、海上風と気圧場を与えた。)、複雑地形と詳細な構造物を考慮した氾濫計算(具体的には、女川町の市街地模型を用いた津波浸水実験ベンチマークテストの再現計算)、を研究計画通り遂行し、その結果を研究論文として公表した。 以上の結果から、適合格子細分化を用いたシームレス氾濫モデルを開発することができた。今後、アジア沿岸域および沿岸都市における津波と高潮災害の防災・減災ツールとして展開していく計画である。
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