研究課題/領域番号 |
17K06582
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
瀬戸 心太 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50533618)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロ波放射計 / 地表水 / 洪水氾濫 / 水田 |
研究実績の概要 |
マイクロ波放射計AMSR2およびGMIから、地表水指標NDFIを算出し、日単位、0.1°解像度のグローバルな全球地表水マップ(GSMaWS)を2013年~2018年の6年分作成した。2017年までの5年平均について、日本周辺を対象に、高解像度の地表水データGSWによる冠水率と比較することで、NDFI=(冠水率)x0.06の経験式を得た。次に、JAXAが公開しているToday's Earth(TE)の氾濫面積率データと比較し、月平均でNDFIと冠水率(x0.06)を比較した。アマゾン川では良い一致が見られたが、他の河川の多くでは、ダムや堤防による洪水管理、水田など人間活動による冠水域などを考慮する必要がある。また、NDFIを日単位でみると、半乾燥域では降雨直後の一時的な冠水に反応していることが見られた。土地利用や降雨のデータを用いて、洪水氾濫を他の原因による地表水から区別することが必要である。 次に、日本の国土数値情報の土地利用データ・洪水による浸水想定区域データを用いて、平成30年7月豪雨の際の岡山県を対象に、NDFIから浸水レベルを推定した。土地利用データにより海域や河川などつねに水面となっている場所をレベル0、浸水想定区域データにより浸水しやすい場所から順にレベル1~5として、レベル0~レベルi(i=0~5)まで浸水した場合のNDFIの値をフットプリントごとに算出し、実際にマイクロ波放射計で観測されたNDFIの値から浸水レベルを逆算した。実際より過大に浸水域が推定されたが、水田の影響を考慮していないことなどが原因として考えられる。さらに、浸水レベルに応じて、浸水域を推定するダウンスケーリングを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全球地表水マップのプロダクトの第1版が、既に6年分完成しており、基礎的な検証を行い、学会等で発表し、多くの研究者の関心を得ている。第1版の作成を通して、さらなる改良のための課題として、土地利用データや降雨データの利用による洪水氾濫以外の地表水との区別、および、空間解像度0.1°からのダウンスケーリングの2点が明確になっている。ダウンスケーリングについては、平成30年7月豪雨の岡山県を事例として、試作しており、日本域全体に拡張する目途が立っている。よって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
土地利用データと浸水想定区域データを用いた浸水レベルの判定を、日本域を対象に行い、過去の洪水氾濫の実績と比較・検証する。同時に、空間解像度の高解像度化を行い、GSMaWSの第2版を作成する。可能ならば、世界の他地域にも同様の手法を適用する。 また、降水データを用いて、降水中のNDFIの補正、降水直後の一時的な地表水を区別することで、洪水氾濫に関する情報をより正確に取得できるように改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロダクトの作成対象が当初の予定よりも拡大しており、定常的な処理に必要な計算機の仕様を決定することができなかった。次年度請求分と合わせて、計算機の購入を行う予定である。
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