研究課題/領域番号 |
17K06583
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大本 照憲 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (30150494)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Kaolin suspension / non-Newtonian fluids / flow resistance / flow structure / suspended sediment / square ribs / PIV / river dynamics |
研究実績の概要 |
カオリン粘土粒子を用いた高濃度土砂を有する滑面開水路流れにおいて体積濃度10%以内では, 土砂濃度はほぼ鉛直方向に一様であった.角柱粗度を有する粗面流れにおいて土砂濃度が空間的にほぼ一様であったために主流方向の流速成分に対するエネルギー収支式を基に議論した. 基礎式の左辺第1項は局所的時間変化項で定常場ではゼロで,左辺第2項は移流項,右辺第1項および第2項は平均流に対する外部エネルギー生成項,右辺第3項は,拡散項または輸送項と呼ばれ平均流エネルギーの再配分項でエネルギーの増減に関与しない,右辺第4項は平均流エネルギーから乱れエネルギーへの変換項(乱れエネルギー生成項),右辺第5項は平均流から熱エネルギーに散逸される直接的熱散逸項である.高濃度土砂流における摩擦損失係数の力学的内部構造を論じる上で,高濃度土砂が平均流エネルギーに対する右辺第4項の乱れエネルギー生成項および右辺第5項の直接的熱散逸項に与える影響を明らかにした. 渦の同定ではレーザー光とCCDカメラを同期させて読み込まれた可視化画像は,100fpsのモノクロビデオ画像としてコンピューターのハードディスクに記録し,PIV法により画像処理した.レンズは焦点距離が50mmのものを用い,1 pixelの最小サイズは0.06mmである.流速のサンプリング周波数は100Hz,1計測面での画像データは4000枚,計測時間は40secであった.なお,トレーサとして粒径30μm,比重1.02のナイロン粒子をアルコール液で十分に攪拌して水中に注入する.得られた画像情報は,スペクトル解析ウェーブレット解析,およびアンサンブル統計解析に掛けられ,平均流特性,乱流特性量および組織渦の基本的動力学特性について検討した. 渦の同定ではQ定義法を用いて渦の発生が平均流場および乱れ特性に与える影響を高濃度土砂との関係から議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,高濃度土砂を含む礫床流れを考える上で基本とも言える礫床(gravel bed),巨礫床(stone bed)に加えて単純化した二次元粗度(円柱粗度,角柱粗度),三次元粗度(球状粗度,角柱粗度)の流れを,面計測が可能な粒子画像流速計法(PIV:Particle Image Velocimetry)を用いて系統的実験を行っている. 高濃度土砂を伴う非ニュートン流体の流れの構造は,実験では高濃度土砂流と類似の粘性特性を有する高分子剤のポリアクリル酸ソーダ(PSA:Poly Sodium Acrylic)水溶液を用い,流速計に PIV法を適用して検討している.本研究では,清水流では河床が完全粗面となる流れに高濃度土砂を加え,その抵抗則および流動機構を明らかにするために運動量輸送方程式,エネルギー収支式および渦の輸送方程式を基に議論している.完全粗面上の高濃度土砂流においては抵抗則が土砂濃度に応じて特異な変化を示すが,その原因が粘性効果,レイノルズ応力および渦の発生機構から概ね説明出来ることが分かった.その結果は,査読付き論文として発表出来た.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は,特に角柱粗度および円柱粗度を用い運動量方程式およびエネルギー収支式に加えて渦の同定法であるQ定義法を用いて渦運動の挙動特性を検討した.渦の時間特性にはパワースペクトルを用い,渦動態の時空間特性を明らかにする予定である.このことは,高濃度土砂が抵抗則に与える影響の本質が渦の発生,発達および散逸機構と深く関わっていることが示唆されたためである. 本年度は,実河川から河床材料を採取し,礫床(gravel bed)および巨礫床(stone bed))の中央粒径がそれぞれ10mmおよび 30mmにふるい分け,カオリンを用いた体積土砂濃度を0-12%の間で系統的に変化させ等流場において水深を計測し.抵抗特性,流れの流動機構および渦の動態機構を検討する予定である.実河川の調査では,熊本県の唐人川感潮域において高濃度土砂流であることが判明したため,この地域においてADVおよびADCPを用いて調査したいと考えている.
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