土砂濃度が流れ場において一様な場合には,支配方程式であるNavier-Stokes方程式は,密度には依存せず動粘性係数のみが支配因子となる.高濃度土砂流と類似の動粘性係数を有するポリアクリル酸ソーダ(PSA)溶液を用いた流れ場に粒子画像流速計法を適用して,清水流との比較によって高濃度土砂流の動力学特性を検討した.さらに,抵抗則を規定する運動量輸送およびエネルギー収支について詳細に検討した. 本研究では,二次元角柱粗度を有する開水路流れにおいて高濃度土砂の粘性増大が大規模渦構造に与える影響を明らかにするため,高濃度土砂流の模擬流体としてPSA溶液を用い,流速の計測にはPIVを適用し,速度勾配テンソルの第二不変量であるQ定義法により大規模渦を同定し,その動特性を清水流との比較を通して詳細に検討した.得られた結果を要約すれば以下の通りである.1)第2不変量Qの瞬時値は,相対的に清水流で最も大きく,PSA溶液濃度の増大に伴い小さ くなる.2)第2不変量Qの時間平均値は,主流速の変曲点との対応が良く変曲点不安定により渦の発生し易い場所であること, PSA溶液濃度に伴って小さくなる.3) PSA溶液濃度Cw=800 mg/lにおけるz=3.59cmを除いて何れのケースにおいても大規模渦の出現確率の極大値は乱れの強さの極大値の位置にほぼ対応した. 4)清水流では渦の移流速度は各位置の時間平均流速に較べて小さく,低速流体塊の浮上に載っており,第1種ボイルとの相関が示唆されたが,PSA溶液濃度Cw=300 mg/lでは顕著なボイルは認められなかった.5)高濃度土砂による粘性係数の増大は,エネルギースペクトルを減少させると同時に,大規模渦の発生頻度および強さを抑え,乱れの生成を抑制している.
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