沿岸域における細粒土砂の自重圧密特性の把握を目的とし,沈降筒による沈降・圧密実験を実施した。実験には,鹿児島県の思川感潮域で採取した底質を使用した。加えて,カオリンとモンモリロナイトを用いた実験も実施した。思川感潮域で採取した底質については,粗粒分および有機物を除去して実験試料とした。各試料に対し,沈降筒内の試料濃度と塩分を変えた25ケースの実験を行った。実験では,沈降筒に試料と塩水を入れて十分に撹拌した後,懸濁水-上層水間の界面位置を測定した。実験結果から,粒子間干渉を考慮した沈降速度式におけるゲル化濃度を評価したところ,思川試料,カオリン,モンモリロナイトのゲル化濃度は,それぞれ約225 g/l,81 g/l,443 g/lであった。モンモリロナイトについては,塩分の増加に伴うゲル化濃度の低下が見られた。思川試料やカオリンのゲル化濃度も塩分増加に伴ってわずかに低下しが,モンモリロナイトほどの塩分依存性は見いだせなかった。沈積した試料の透水係数は試料の圧密状態に依存することから,一部の実験ケースについては長時間の測定を実施し,圧密排水に係わるパラメータとして,間隙構造の特徴を表すフラクタル次元と透水係数評価式中の係数(以下,終末透水係数)を評価した。思川試料やカオリンのフラクタル次元(約2.67)は,モンモリロナイト(約2.43)と比較して大きく,塩分の増加に伴って減少する特徴がみられた。一方,終末透水係数については,思川試料やカオリンの値がモンモリロナイトよりも小さく,かつ塩分増加に伴って増大する傾向がみられ,フラクタル次元から推察される堆積物中の間隙構造の特徴の違いとの対応が確認された。
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