研究課題/領域番号 |
17K06585
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
柿沼 太郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70371755)
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研究分担者 |
安田 誠宏 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (60378916)
加古 真一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60709624)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 副振動 / あびき / 気圧波 / 推算 / 簡易式 |
研究実績の概要 |
まず、気象に関する諸条件及び海面水温を与えて解析を行なう、大気場の数値解析モジュールを作成した。次に、強非線形・強分散方程式を基礎方程式とし、東シナ海の海面における圧力を与えて、長周期波の生成をシミュレートするモデルと、長周期波を入射波として与えて、湾水振動を計算するモデルを開発した。そして、これら三つのモデルを接合し、大気・海洋・沿岸を対象とした数値モデルを開発した。本モデルを適用し、過去に鹿児島県浦内湾及び長崎湾であびきが発生したケースを対象として、大陸及び東シナ海上の気象条件を与え、これらのあびきの再現解析を実施した。 更に、あびきの最大振幅を推定する簡易式を作成した。そして、東シナ海上の気象のGPVデータと、浦内湾における気圧及び水位の観測結果とに基づき、簡易推定式の精度を検証した。GPVデータから、浦内湾に向かう方向の気圧の空間波形を抽出さえできれば、本手法の適用により、浦内湾におけるあびきの最大振幅を概ね良好に推測できるため、東シナ海に気象観測ポイントを展開・維持することなく、鹿児島県離島支所等においても、数時間の余裕をもって、あびきの発生を推測し、副振動に備える対策を講じることが可能であると考えられる。 なお、数値モデルの適用において、過去のデータに関しては、従来述べられているような増幅機構等に言及できたものの、本研究の実施期間中に、南九州において顕著なあびきが発生せず、浦内湾の観測結果と気象条件の関係性を精緻に検討することができなかった。ただし、長崎において2019年9月に発生したあびきに関する現地調査結果と、大陸及び東シナ海上の気象データを得ることができたため、今後、数値モデルの検証と、広範囲を対象とする、新たなあびき発生機構の解明を行なう必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
南九州において、顕著なあびきが発生せず、数値モデルの検証と、推算精度の検討ができなかった。ただし、長崎において2019年9月に発生したあびきに関する現地調査結果と、大陸上の気象データを得ることができたため、今後、上記の検証を行なう必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
継続して浦内湾における気圧及び水位の観測を実施し、開発した数値モデルを適用して、浦内湾の観測結果と、大陸及び東シナ海上の気象条件の関係性を精緻に検討する。また、長崎において2019年9月に発生したあびきに関する現地調査結果と、広領域の気象データに基づき、同数値モデルの検証と、新たなあびき発生機構の解明を行なう必要がある。そして、あびき発生の原因を大陸上に見出すといった、副振動発生の予測に貢献できるような、気象と水面変動の関連性を抽出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
甑島といった離島や、南九州沿岸において、比較的大規模のあびきが発生しなかったため、現地調査のデータが得られなかった。数値モデルの検証では、諸条件が明確な事象に対する観測データを得る必要があり、補助事業の目的をより精緻に達成するために補助事業期間を延長し、国内における現地調査のための旅費等を確保したい。また、参加を予定していた学会と学内業務の期間が重なり、参加が叶わなかったため、次年度に他の国際会議が開催されるのであれば、これに出席し、これまでの成果を発表したい。更に、離島や、鹿児島県沿岸において、地方公共団体において、あびきの予測手法の説明を実施したい。
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