研究課題/領域番号 |
17K06587
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
朝岡 良浩 日本大学, 工学部, 准教授 (00758625)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 氷河融解 / エルニーニョ現象 / 合成開口レーダ / UAV / 氷河融解・流出モデル / ボリビア多民族国 |
研究実績の概要 |
本研究は、ボリビア多民族国の水源域に分布する熱帯氷河を対象として、エルニーニョ現象時の気候擾乱が氷河水資源の持続性に及ぼす影響を明らかにする。平成29年度は、人工衛星Sentinel-1A, -1B搭載のC-band SAR(Cバンド合成開口レーダ)のデータを用いてHuayaPotosi氷河におけるマイクロ波の後方散乱特性を解析して、氷河域の表面状態(含水量、密度)の季節変化を明らかにするとともに、雪線高度の推定を行った。得られた結果は、次年度に氷河域の降雪量の高度分布の推定および氷河融解・流出モデルのパラメータ最適化に利用する。 平成29年度は8月と3月にボリビア多民族国に渡航して、熱帯氷河が上流域に分布するTuni貯水池集数域の水文・気象モニタリング網のデータを回収した。また、8月の渡航時には、HuanaPotosi氷河とCondoriri氷河においてUAVのフライトを実施して、氷河の後退状況をモニタリングするとともに高解像度の地形データを作成した。これらのデータは、次年度に氷河・融解流出モデルのインプットとして利用する。 2015年から2016年にエルニーニョ現象の期間、ボリビア首都圏では2016年後半に渇水が発生した。水文・気象モニタリング網のデータと氷河融解・流出モデルを用いてTuni貯水池の水収支を解析した結果、2015年雨季の降水量が例年よりも少なく、さらに2016年の雨季の開始が遅れたことが渇水の要因と考えられた。また、氷河多層モデルによって2015年雨季の氷河融解量が少なかったことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工衛星のマイクロ波センサのデータを用いて氷河域の表面状態の季節変化に関する解析ができた。また、UAV観測を実施して、2つの氷河の高解像度画像と地形データを取得できた。さらに、対象とする流域の水文・気象モニタリング網のデータ蓄積が進み、氷河融解・流出モデルの適用によって流域水収支・水資源量を解析し、氷河多層モデルを適用して氷河表面の熱収支解析を実施した。これらの解析によって、エルニーニョ現象時の特異な現象を示した。 以上より、本研究を遂行するうえで基盤となるデータを順調に取得し、重要な知見も得られていることから、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
エルニーニョ現象時における氷河の熱収支解析を行い、融解機構を明らかにする。また、流域の水循環・水資源に対する氷河融解量と降雨・融雪量の寄与を定量化する。以上により、エルニーニョ現象時における氷河融解および氷河水資源量の特性を明らかにする。 ボリビア国に渡航して、UAVを用いた測量・モニタリングを継続し、氷河域と地形データを蓄積する。また、水文・気象モニタリング網のデータを回収するとともにセンサを一部リプレイスする。これらのデータと氷河融解・流出モデルを用いてエルニーニョ現象が氷河水資源の持続性に及ぼす影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の準備が予定より遅れており、投稿料として確保していた金額を次年度に使用することとした。平成30年度内に投稿論文の掲載まで完結させ、当初の予定通り投稿料として使用する。 対象地域で稼動する水文・気象モニタリング網のセンサのリプレイスを平成30年度に集中して実施する計画に変更したため、物品費を繰り越した。
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