研究課題/領域番号 |
17K06590
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研究機関 | 北海商科大学 |
研究代表者 |
田村 亨 北海商科大学, 商学部, 教授 (80163690)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 空港連携 / 地域航空 / 航空ネットワ-ク / 相互補完性 |
研究実績の概要 |
本研究は次の3つの段階から成る。①欧米の先進事例とわが国の都市間交通の実態分析から、座席数80-100人の小型航空機材を用いた地域航空ネットワ-クの相互補完性を生み出す事業領域を抽出すること。②マクロな視点から、北海道と九州の航空ネットワ-クを想定して、空港連携が国民の社会的厚生にどのように影響するかを分析すること。③航空路線というミクロな視点から、シナリオに応じたリスク分析を行い、地域連携による相互補完性を生み出す航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行うこと。 平成30年度の研究成果は、上記の②と③の一部に関わるものであった。まず、②については、昨年度の「ポ-トフォリオ戦略とシナジ-戦略から構築した定量分析モデル」の改良を行った。独自に改良した点は、費用関数に関わる「地方空港の着陸料の変化」と「小型機材を用いた運行」の2点であった。この改良により、複数の自治体が共同して機材整備の負担を担うことにより、民間事業者の経営環境は改善されて、交通サービスの向上が図られることを示せた。次に、③については、航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価に使う「わが国への地域航空導入シナリオ」を完成させた。シナリオ作成に当たっては、北海道と九州ブロックを取りあげて、「新千歳と福岡を地域ハブとしたブロック内の航空ネットワ-クを幹線フィ-ダ-として考える案」と「現在ネットワ-クとも言えるブロック内非幹線空港と羽田路線を強化した羽田乗継の案」の2つを示し、その中間的な案を含めて数個の地域航空ネットワ-ク案を抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間のうち、これまでの2年間で、以下の3つのことを完成させた。一つめは、地域航空ネットワ-クの相互補完性を生み出す事業領域を抽出することであった。本研究では、スコットランドの事例を参考に、わが国の北海道と九州の航空路線網を抽出できた。二つめは、マクロな視点からのモデル構築を終えたことでる。このモデルを使って、損益分岐点を引き下げた場合、民間事業者には利潤機会の拡大というインセンティブが生まれ、非効率な運行に対する歯止めが働くことを把握できた。同時に本モデルを使って、地域住民は合理的な価格で交通サービスを利用できるため、厚生水準が上昇することを把握できた。三つめは、航空路線というミクロな視点から、地域連携による相互補完性を生み出す航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価をする際に必要となる分析シナリオを構築できたことである。これにより、最終年度に行うミクロな視点からの分析と研究総括の目途が立った。 このように、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成31年度は、地域航空導入シナリオに応じたリスク分析を行い、地域連携による相互補完性を生み出す航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行って、研究の最終とりまとめを行う。 重要な検討課題は自治体のリスク負担である。これは、複数空港経営の①ポ-トフォリオ戦略、②シナジ-戦略、③ネットワ-ク戦略のうち、本研究で扱う①と②を定量分析する際に、「需要」、「航空事業改善」、「空港経営改善」の予測値に、どの程度の不確実性を組み込むかという問題である。特に、自治体の連携により着陸料が低減され、参入する航空会社数が増え、航空ネットワ-クの拡大がさらなる需要増をもたらすという、“状況の不確実性”を取り込んで分析する点である。需要サイドの条件が明確になれば、運航事業者の調達・整備コストの縮減の程度、路線維持あるいは路線新設等による地域経済の活性化への影響を計測することが可能となる。 以上に留意して構築した評価モデルにより、複数自治体の参加可能性と官民のリスク分担(公共が受容可能な範囲)が明らかにでき、地域住民・議会への合意形成にも役立つモデルの使い方を総括して、3年間の研究を纏める。
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