本研究は次の3つの段階から成る。①欧米の先進事例とわが国の都市間交通の実態分析から、座席数80-100人の小型航空機材を用いた地域航空ネットワ-クの相互補完性を生み出す事業領域を抽出すること。②マクロな視点から、北海道の航空ネットワ-クを想定して、空港連携が国民の社会的厚生にどのように影響するかを分析すること。③航空路線というミクロな視点から、シナリオに応じたリスク分析を行い、地域連携による相互補完性を生み出す航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行うこと。 最終年度は、近年、世界的に注目されわが国でも導入が始まっている空港の民営化を取り上げて、民営化が航空ネットワークへ及ぼす影響を把握した。北海道では、2020年1月から道内7空港をバンドリングした形で民営化が始まっており、この事例を対象として、空港連携による地域航空ネットワ-クの相互補完性の評価を行った。評価は、自治体の連携により着陸料が低減され、参入する航空会社数が増え、航空ネットワ-クの拡大がさらなる需要増をもたらすという、“状況の不確実性”を取り込んで行った。 本研究では、7空港運営会社の着陸料、航空会社の機材・運行頻度、および旅客の交通需要が同時決定されるモデルを構築した。モデルは、旅客配分では一般化費用最小問題、航空機配分・着陸料の設定においては利潤最大化問題を解き、着陸料・運行頻度・旅客の需要数などの変数が同時決定される構造とした。本モデルにより、需要サイドの条件が明確になれば、運航事業者の調達・整備コストの縮減の程度、路線維持あるいは路線新設等による地域経済の活性化への影響を計測することが可能となった。 本研究により、複数自治体の参加可能性と官民のリスク分担(公共が受容可能な範囲)を明らかにできた。最後に、地域住民・議会への合意形成にも役立つモデルの使い方をまとめて、3年間の研究を総括した。
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