研究課題/領域番号 |
17K06591
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福本 潤也 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30323447)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マッチングシステム / 支援物資 / 義援物資 / 物資集中問題 / 費用配分 / インセンティブ / ユーザビリティ |
研究実績の概要 |
平成29年度は当初,1) 車両配送と費用配分を同時に考慮したマッチング・システムとマッチング・アルゴリズムの開発と,2) プロトタイプ版マッチング・システムへの標示情報出力機能の追加とユーザビリティの性能評価実験を行うことを予定していました.このうち,2) については研究の進捗が遅れていて,1) についてのみ以下の成果が得られた. 研究代表者が 1)に関する先行研究で開発したマッチング・システム(具体的には,物資支援者に提供可能な物資の種類や数量に加えて,物資提供に対する支払意志額を尋ね,VCGメカニズムを用いて物資の割当計画・輸送計画・費用負担を同時に決定するシステム)は,物資提供者の費用負担額であるVCGペイメントの算出の計算負荷が大きく,実装版MSには組み込めないという課題があった.そこで,Ausubel and Milgrom が提案した代理人による同時競上げオークションをMSの割当計画・費用負担決定問題に適用可能な形で拡張し,1) VCGメカニズムと同じ割当計画と費用負担を出力する,2) 誘因整合性などの優れた理論的性質を持つ,3) 計算負荷が小さい,という3つの特徴を持つアルゴリズムを定式化した.これにより,大規模災害発生後のような義援物資の支援者数が多い場合でも,アルゴリズムの中で解くべき最適化問題の規模は支援者数に比例して大きくなるものの,解くべき補助問題の回数が支援者数に比例して増加しないことで,実装版マッチング・システムに組み込むことが可能なアルゴリズムを開発することに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初,研究代表者と分担して本研究課題に取り組む予定であった Rubel Das 氏が研究開始時点である2017年4月に科学研究費の研究分担資格のない組織に異動しました.その結果,研究代表者が単独で本研究課題に取り組む必要が生じ,当初の予定と比べて研究の進捗が遅れることになりました.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,1) 平成29年度に実施できなかったプロトタイプ版マッチング・システムへの標示情報出力機能の追加とユーザビリティの性能評価実験に取り組む.更に,2) 当初計画において予定していた車両配送と費用配分を考慮したMSの実装と,3) 潜在的利用者の利用インセンティブに関する実証実験に取り組む.1) では,標示情報(支援物資を梱包した段ボール箱などに貼られる物資の種類・数量・賞味期限・送り主等を記した用紙)の出力機能を,プロトタイプ版の開発に協力してもらった情報システム会社のサポートを得て追加する.2) では,平成29年度に開発したアルゴリズムをプログラム・コードとして記述してプロトタイプ版の上で稼働するようにする.3) では,義援物資の提供者がマッチング・システムを利用して被災者に物資提供することと,マッチング・システムを利用せずに被災者と直接連絡をとって物資提供を申し出ることの両方が可能な状況を室内実験環境として用意し,当該環境において物資提供者がマッチング・システムを利用するインセンティブを有するかどうかを実証的に検証する.同実験では,プロトタイプ版のユーザビリティについても同時に評価する.性能評価実験の被験者にシステムを直接操作してもらい,画面構成の分かりやすさ,作業内容の分かりやすさ,処理速度の快適性などを調査する.調査結果を元に,インターフェースの改善点等を明らかにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度では当初,1) 車両配送と費用配分を同時に考慮したマッチング・システムとマッチング・アルゴリズムの開発と,2) プロトタイプ版マッチング・システムへの標示情報出力機能の追加とユーザビリティの性能評価実験を行うことを予定していた.このうち,2) については研究開始時点に研究分担者を予定していたRubel Das氏が科学研究費の研究分担者資格のない組織に異動となり,研究代表者が単独で取り組む必要が生じたため,研究計画に遅れが生じてしまった.マッチング・システムの実装には,情報システム会社へのシステム開発補助の委託費が含まれており,それらの支出が翌年度に回ることとなり,使用額の大幅な余剰が発生してしまった.平成30年度には遅れていた上記2)も実施する計画であり,その段階で次年度使用額を支出することを予定している.
|