本研究が対象とする,防災や復興のまちづくりの場では,実践者である住民やNPOと専門家との間で互いの知識や経験を共有する機会(省察的対話)は不可欠であるが,両者を実証主義に則った観察ー被観察の関係に置くかぎり,そうした対話を現実に生み出すことは容易ではない.本研究は「専門家と実践者が行ってきたことを振り返る対話によって,研究そのものが深化する」という構成主義の立場に立ちつつ,地域の中で専門家と実践者の間に良質な省察的対話が生まれ,継続されるメカニズムを復興まちづくりの事例をもとに明らかにすることを目的として実施した. R2年度は,新たに観察を開始した,糸魚川駅北大火被災地の復興まちづくりを研究フィールドとして,参与型観察を継続した.その結果,コミュニティの運営に住民が携わる部分が大きくすることで,主体性を引き出すことができると考えられること,移住者は地域に住むことで住民と近い立場で活動をすることにより住民の主体性を引き出す事例があったことから,住民の主体性を引き出す一助になると考えられること,移住者の活動や体験を知ることによる「移住の連鎖」が起きている可能性があることから活動を続けていくうえで行政からのサポートも重要であると考えられることなどを結論として得た.
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