本研究は夜間の道路交通や街路空間の形成に大きな影響を与える、道路空間の明るさや色彩の連続性の状態をフラクタル次元を用いて定量的に表現し、道路照明の連続性や誘導性と不定期に出現する横断歩行者用照明や夜間発光型標識等が、夜間の歩行者やドライバーの心理状態に及ぼす影響や交通安全性にどのような影響を与えるのか明らかにすることを目的としている。 2020年度は2019年度末に冬期の道路交通に関する追加実験を行う予定であったが、天候面及びコロナ禍の影響により実験することができなかったため、予定を変更してこれまで行ってきたデータを用いてより精度の高いモデルを構築することとした。そこで空間の連続性を考慮し、動画から連続的に空間画像を抽出して計測してフラクタル次元の算出を行った。さらにフラクタル次元が運転者の安心感にどのような影響を与えているかを把握するために、重回帰型の安心度評価モデルを作成した。運転者の安心度については2018年度に行った街路ごとの心理的な項目を評価した結果を用いた。また算出したフラクタル次元のほかに、各街路のフラクタル次元の特性と各街路の構造上の諸特性を説明変数として用いた。その結果、運転者は明るさが空間全体に広がっていることに安心を感じるが、その一方で短い間隔での明るさの変化を望んでいないことが分かった。これらのことから、街路照明の設置については広範囲に明るさが広がるランプを設置したり、街路灯の間に補助照明を設置したりすることが運転者の安心感に良い影響を与えることができると思われる。 そしてこれらの結果を補助事業期間延長承認申請書に延長申請理由に挙げていた、学会での成果発表を行った。
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