研究課題/領域番号 |
17K06599
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 潔司 京都大学, 経営管理研究部, 共同研究講座教員 (50115846)
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研究分担者 |
松島 格也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60303848)
瀬木 俊輔 京都大学, 工学研究科, 助教 (50762382)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市経済モデル / 高速鉄道 / 国土計画 / 固有の歴史と文化 / 一極集中の是正 |
研究実績の概要 |
本研究は、国内に存在するそれぞれの都市圏には、固有の歴史的・文化的な特性が存在し、そこで生産される財・サービスに、それらの特性が反映されていることに着目した。このように、各都市圏に固有の歴史的・文化的な特性が反映された財・サービスを、本研究は地域メニュウと定義した。都市圏ごとに異質な地域メニュウが生産されている国においては、リニア新幹線のような超高速鉄道の整備による複数の都市圏の市場の統合は、人口の都市圏間での分散を促し、人口一極集中の是正や、均衡の取れた国土形成を実現する可能性がある。本研究は、地域メニュウの異質性が存在する環境において、このような人口の分散がもたらされるための条件について分析することが可能な数理的モデルを構築した。このモデルの特徴は、新経済地理学の空間均衡モデルに、異質な地域メニュウの存在を明示的に取り入れたことにある。従来の空間均衡モデルによれば、大都市圏の混雑が激しくない限り、超高速鉄道の整備は、集積の経済の効果により、大都市圏への人口の一極集中を促すという結論が得られる。すなわち、人口の一極集中が進む大都市圏に土地の余裕があれば、超高速鉄道の整備はストロー効果をもたらすと予想される。他方、本研究の構築したモデルでは、超高速鉄道の整備により、都市間交通費用が劇的に削減された場合には、人口の分散がもたらされることが示された。なぜなら、各地域に固有の歴史・文化・ソーシャルキャピタルや地域資源を活用した多様な地域メニュウの生産を行い、これらの地域メニュウを都市圏間で交易することにより、国土全体の経済活動や社会厚生を増進できるからである。この視点は、リニア新幹線の整備を通じた、スーパーメガリージョンの形成による人口の再分散を議論するうえでは重要なものであると言え、このメカニズムに関する政策分析が可能な方法論を提示したことが、本研究の主要な成果である。
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