研究課題/領域番号 |
17K06604
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉田 長裕 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20326250)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体反応 / ストレス評価 / 自転車運転タスク / 自転車利用環境評価 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載したH29年度における研究計画の3つの項目について、各成果を記す。 1.生体反応および運動負荷を同時計測するための実験装置の構築:携帯型生体反応を同時に計測するデバイスを購入し、学内実験コースにおいて、電極取り付け位置の検討、自転車走行タスク種別に各生体反応特性を整理した。なお、運動負荷計測に関しては、予算制約から、呼気ガス手法の代わりに簡易の心拍計測+車両挙動計測に変更し、実験装置を構築した。 2.運動負荷計測の方法による違いの検証:学内倫理審査を経た後、学生5名を対象に、学内実験コースにおいて、RRI(心拍間隔)、EMG(筋電)、GSR(電気皮膚反応)の3種類について生体反応を計測した。実験コース内に、被験者に要求するタスクを単純/複雑(実道路)の2つに分けることで運動負荷の違いをみることとした。単純な運転タスク処理を要求する実験コースは、幅50cmの直線8m、幅15cmの一本橋2m、15km/hで20m走行した直後に急制動、間隔1.5mのスラローム9m、10cmの段差降り、右折、左折で構成した。その結果、各運転タスクに対する各生体反応の特徴を整理することができ、運動負荷とは独立したストレス要因を評価できることを検証した。 3.国内通行環境整備事例における実走行実験:国内の自転車歩行者道、自転車道の2路線において、実走行実験を行い、生体反応と主観的評価の関係についても分析を行った。自歩道では、歩道駐車や幅の狭い道路など運転負荷が継続するような状況下での心拍間隔(RRI)の反応、自転車道や視覚分離自歩道では対向の自転車とのすれ違いやカーブ走行などハンドル操作に起因する筋電(EMG)の瞬間的な反応と電気皮膚反応(GSR)の漸次的な反応がみられ、運転タスクによる生体反応の変動からそれぞれの走行空間の評価が可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体反応機器のテスト、計測方法の検討、模擬コース実験、学外走行実験など概ね順調に進捗している。計測機器のうち、自転車車両挙動を捉える計測機器に不具合があり、メーカーと動作不良現象の再現に時間を要したため、年度内にデータを取得することができなかった。学外走行実験に関しては、2/6路線でデータを取得できた。残りの4路線においては、次年度に実施する予定である。 1.生体反応および運動負荷を同時計測するための実験装置の構築:ほぼ予定通り、一部測定装置の不具合発生(FIX済み)。 2.運動負荷計測の方法による違いの検証:ほぼ予定通り、車両挙動計測装置の不具合のため、一部分析が未完了。次年度に再度実施予定。 3.国内通行環境整備事例における実走行実験:2/6路線に関してデータ取得、残る4路線に関しては、次年度実施予定。
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今後の研究の推進方策 |
2年目においては、1年目に取得できなかった実験装置のデータを加えて基礎分析を行うとともに、残る4路線においても実走行実験を行う。 加えて、研究計画に示された4.自転車利用者の運転行動・反応との関連分析、5.ストレス指標を用いた通行空間のLOS評価、の2つの項目に関して、基本的には得られたデータの分析を行う予定である。以下は、その内容である。 4.自転車利用者の運転行動・反応との関連分析 実験で得られたデータを用いて、ストレスの変動要因を明らかにする。被験者および自転車挙動、さらに周辺の状態をモニターしたカメラなどのデータを使って、ストレスと運転行動との関係やストレスと他の交通条件との関係を分析する。とくに、車道上で駐車車両を追い抜いたり、交差点における右左折車両との錯綜の影響など、自転車利用者にとって複雑な状況下のレベルを運転タスクの観点からわける。 5.ストレス指標を用いた通行空間のLOS評価 ストレス指標の変動特性を踏まえ、集計タイプのLOS評価にも対応可能な代表値の算定方法を決定する。とくに、生体反応を用いたストレス反応はスパイク型のように一瞬だけストレス値が高まることがあり、自転車乗車中にはこういったストレスが頻繁に発生する可能性が高い。これらの特徴を考慮した評価方法については、諸外国で提案されている生体反応を用いず交通条件等のみで求めることができるBicycle Level of Service(BLOS)、Bicycle Compatibility Index (BCI)等の自転車LOS評価方法と比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度は、当初予定した計測装置(物品費)が予算よりも上回ったが、運動負荷計測方法を変更したため、その他で計上していた予算に余った。また、計測装置の不具合に加え、屋外実験が2/6路線でしか実施できなかったため、計上していない。 H30年度には、計測装置を整えた上で6路線分の実験データを収集することにしており、前年度の未執行謝金をそのまま使用する予定である。
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