本研究は、自転車通行環境の安全性・快適性を評価するための方法論として、生体反応を用いたストレス計測とそれに基づいた自転車通行空間サービスレベル(LOS)の実用的な評価方法の確立を目的とする。具体的には、(1)生体反応に基づいたストレス計測方法の検討(2)自転車利用者の運転行動反応との関連分析(3)従来のLOS評価手法との比較による本手法の適用範囲の明確化、以上の3つの課題に取り組むこととした。 生体反応および運動負荷を同時計測するための実験装置の構築し、通行環境整備事例における実走行実験を行い、運転行動と生体反応の関連分析、生体反応の基づいた通行空間のLOS評価を行った。なお、生体反応については、本研究では、被験者のRRI(心拍変動間隔)、EMG(筋電図)、GSR(電気皮膚反応)、に加え、車両の傾斜角度の計測を加えて実験を行った。被験者は、自転車運転経験の異なる学生と教員の計15名で、実験コースは、被験者に要求するタスクを単純/複雑(実道路)の2つに分け、ストレス要因と運転操作による影響をみることとした。複雑コースとしては、実際の道路上にある路面標示整備箇所(全面着色・矢羽根・高視認性・視覚分離)と路面標示の設置がない生活道路から構成される全長約6km(所要時間30分)のコースを設定し、評価実験を行った。 評価実験のデータを分析した結果、生体反応特性について、運動および運転操作の影響程度に加え、通行環境に依存する反応しやすいストレス要因を特定することができた。加えて、運転経験別の生体反応特性については、運転経験による運転操作スキルの違いが生体反応に現れることや、自動車や大型車による追い抜かれ時に異なる反応を示すことがわかった。最後に、通行帯の比較では、歩道よりも車道のほうがストレス評価が高く、自動車や歩行者との追越やすれ違いなどの要因の影響を定量化することができた。
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