研究課題/領域番号 |
17K06607
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
高田 和幸 東京電機大学, 理工学部, 教授 (30282867)
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研究分担者 |
屋井 鉄雄 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (10182289)
平田 輝満 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (80450766)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フライトキャンセル / アンケート調査 / 行動意図 |
研究実績の概要 |
(1)2017年5月27日に発生した大韓航空機エンジン火災事故,および2018 年1 月の大雪により,旅行開始前に搭乗予定のフライトがキャンセルされた旅客(標本数はそれぞれ199名,333名)の対応行動の比較分析を行った.その結果,エンジン事故の際には,33%の旅客が新幹線を利用して予定していた目的地へ移動しており,一方,降雪時には10%の旅客のみが新幹線で目的地へ移動していたことが明らかとなった.またエンジン火災時には31%,降雪時には51%の被験者が旅行自体を改めて計画すると回答され,計画していた旅行が実施されている可能性が高いことが示された.一方,10~20%の旅客は予定していた旅行を中止すると回答しており,一部の市場では経済損失が生じていることが明らかとなった. (2)フライトがキャンセルされた旅客の対応行動は,多くの制約の下で顕在化した行動である.そこで大雪の影響を受け被験者のデータを用いて,キャンセル後の行動意図について分析を行った.本研究では,当日のうちに予定していた目的地への移動を意図したか,移動することを考えたならば,どのような交通手段での移動を意図したかについて分析した.特に移動手段として想起した交通手段については,航空機のみと回答された方が50.0%,航空機と新幹線と回答された方が30.1%となり,これらで大半を占めた.次に,旅行者の特性と想定された移動手段(集合)との関連性を明らかにするために,選択モデルを推定した.その結果マイレージの上級会員は航空機のみを想定することに有意に働くことが示された. (3)これらの結果については,Air Transport Research Society 2019および土木計画学研究発表会2019秋大会において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度には,支払い意志額モデルの推定を通じて「突発的フライトキャンセルに伴う利用者の損失便益」の推計手法を構築する計画であったが,フライトキャンセル後の旅客の行動意図に関する分析とそのモデル化に時間を要することとなった.このような理由から,進捗状況は「やや遅れている」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,旅程変更に対する旅客の支払意志額(WTP)の関数の推定を行い,突発的キャンセルに伴う損失便益の推計方法を構築する.その結果を学会で発表し,精緻化を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,2019年度計画では,損失額の推計手法の構築を行う予定であった.しかし,研究の過程で,突発的フライトキャンセルによる旅行者への影響および経済的な損失を推計するためには,実際,キャンセル後にとられた行動に加えて,どのような行動をとりたかったかといった行動意図を評価することが必要であるとの認識に至った.そのため,分析項目が増したことに起因し,旅行者のキャンセル回避に対する支払意思額関数の推定作業に遅れが生じた.また関数の推定結果については,学会で発表し,意見交換を通じて精緻化が図れると考えられる.よって次年度においては,学会への論文投稿費用ならびに学会参加のための旅費に使用する予定である.
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