本研究が主要な対象行動としてきた制限速度超過運転行動(いわゆるスピード違反)について、計画的行動理論、習慣理論及びprototype willingness model(PWM)の3理論を接続して説明できることを示すために、上記諸理論の諸変数を網羅した調査を行った。 本調査は2021年12月24日(金)~2021年12月26日(日)の期間中に、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県でインターネットを介して行われた。事前に行われたスクリーニング調査によって、運転頻度の質問で「全く運転しない」と答えた人を本調査の対象から除外した。5つの年齢区分で男女合わせて140人を目標として調査を行い、最終的に、2223名(男性1112名、女1111人)のデータを得た。調査項目には計画的行動理論の基本変数、制限速度超過運転習慣尺度にくわえ、PWMの基本変数であるリスク行動の機会や状況を受け入れてしまう誘発状況への開放性、典型類似性、典型好意度(スピード違反をよくする人を典型とした)、さらに強化感受性理論に基づく報酬感受性、罰感受性を測定するSPSRQ-RCの日本語版尺度を加えた。 重回帰分析によれば、制限速度超過運転行動の間接的測度として用いた「自己報告行動」を最も強く規定したのはPWMが行動の直接的要因とする「誘発状況への開放性」であった。次いで「速度超過習慣」、「制限速度超過意図」が自己報告行動を規定していた。 これらの結果から、PWMならびに計画的行動理論と習慣理論の主要変数が制限速度超過運転行動を規定していると考えられた。今後は、行動の直接的規定因である制限速度超過意図および制限速度遵守意図、制限速度超過運転習慣の下位規定因との関係も含んだ統合的な構造モデルを構築するために、構造モデルに含むべき変数を選択・特定化して、階層的重回帰分析および構造方程式モデリングを行う予定である。
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