研究課題/領域番号 |
17K06610
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柳澤 吉保 長野工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70191161)
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研究分担者 |
高山 純一 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (90126590)
轟 直希 長野工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (50733268)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集約型都市 / 中心拠点の設定 / 用途別都市機能 / 居住人口 / アクセシビリティ / 歩行者視覚情報 / 歩行空間評価 / 歩行者意思決定 |
研究実績の概要 |
歩行者優先道路空間における街路評価および歩行者行動分析では、実際に歩道において撮影した視覚情報に関する動画データから、①アイトラッキング装置を用い視線の動きを可視化することで、歩行空間視覚密度(視覚物に対する着目度)を算出し、街路要素の視覚面積、空間評価との関連性を明らかにした。②対面歩行者などの移動体や設置物の位置による着目割合の変化や危険性の評価を行った。またそれらに基づいて、沿道側にいる歩行者が接近し,危険に感じると車道側に,街灯があると沿道側に回避する傾向があること等がわかった。 集約型都市構造の評価分析では、拠点駅に対する用途別都市機能施設および居住人口のアクセシビリティ(AC)とトリップ特性の関係を明らかにした。長野駅では医療・福祉施設ACや商業施設ACと、拠点エリア内における道路整備量が居住人口ACの増加に影響していることがわかった。また、医療・福祉施設ACが高い地区ほどトリップ数は増加している傾向があった。さらに、居住人口が集積している地域ほど駅周辺へのトリップ数が増加していることがわかった。 さらに、各拠点ごとの都市機能施設の補完性に関しては、長野駅に向かうトリップが多く、長野駅周辺の都市機能施設は他拠点に対して高い補完性を有している可能性が確かめられた。自動車交流ではどの拠点間においても交流トリップが多くみられ、自動車分担率の高さが伺える結果となった。医療福祉施設を目的とするトリップは、なるべく移動に負担の少ない自動車利用(送迎やタクシーなど)の選択が多くみられた。医療福祉施設については、移動距離が長くなるほど鉄道利用が増加する実態がある。また大病院の立地の関係から、施設集積差が大きいほど交流トリップ数が増加することが分かった。家庭用品店についても同様に、移動距離が長くなるほど鉄道利用が増加することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、前年度の基本調査分析結果を用いたシステムの構築を行う。 (1) 拠点エリア集客力算定システムを構築する。 (2) 拠点間連結評価システムの構築を行う。 (1)では、GIS等を用いて交通拠点エリア内の施設(商業集客施設及び歴史・文化施設)の立地分布、移動距離を明らかにし、拠点エリア内の集客数を明らかにする。具体的には、施設および移動空間の魅力度を説明変数としたアクセシビリティ型(AC型)の集客指標を構築するとしているが。本AC指標を交通拠点の選択行動モデルに組み込むことで、集客力算定システムのモデル構造の特定までできている。 (2)では、拠点エリア間の繋がり度合いを明らかにする。具体的には、公共交通ネットワークを考慮した拠点エリア間の連結信頼性と、公共交通のサービス水準である所要時間、運賃、運行ダイヤなどを変数とした時間信頼性の評価も行うとしていて、各拠点間の交流量までモデル化できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、(1)交通拠点の選択、および移動手段の選択状況を評価するモデルを構築する。さらに拠点を中心とした都市機能誘導区域と居住誘導区域の近接が拠点エリアへのトリップ促進効果を明らかにすることで、拠点エリアの設定および都市機能の導入施策の妥当性を評価する。 (2)歩行者の交通拠点、立寄り施設、移動経路を明らかにして、回遊行動形成の評価システムを構築する。交通拠点からの移動手段、立ち寄り施設までの移動抵抗、算定された施設と移動空間の魅力度を変数とし、交通拠点の選択⇒立ち寄り施設の選択および回遊継続の有無⇒帰宅などの回遊行動の形成評価モデルを構築する。拠点エリアで設定されている集客力指標に、各拠点エリアおよび公共交通ネットワーク上の居住人口とPT調査結果に基づく発生交通量を入力する。そして拠点エリア内の施設および回遊行動における移動空間の魅力度の上昇率と回遊トリップ数の増加率を算定評価するシステムを構築する。 以上より、構築したシステムを用い、長野市を対象に公共交通ネットワーク上の交通拠点エリアの集客力および市街地の集約力を評価し、地域資源となる都市機能施設の誘導および回遊移動経路の整備指針を検討する。また、公共交通ネットワークによる拠点間の連結信頼度および運行ダイヤ等のサービス水準を考慮した時間信頼度を考慮した公共交通路線網についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
拠点選択・手段選択行動モデルの作成、交通拠点を中心とした回遊行動モデルの構築に非集計行動解析および画像解析ソフトが必要となる。また、既存のGISソフトに都市機能施設集積状況ソフトを加えることで、居住誘導区域の人口密度などを抽出し、モデルに反映させることを考えている。作業には、地図ソフトを使うことも考えている。データのサイズが大きいので、保存用にメモリーも購入する予定である。その他、研究に必要な消耗品および、研究作業のための謝金、研究成果を発表するための旅費も計上している。
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