研究課題/領域番号 |
17K06615
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤田 昌史 茨城大学, 工学部, 准教授 (60362084)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヤマトシジミ / 環境ストレス / 総抗酸化力 / 成長力 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究計画では、1) ヤマトシジミのサイズ別の総抗酸化力応答の評価、2) ヤマトシジミの成長力の評価手法の構築の実施を予定していた。 1)については、ヤマトシジミの総抗酸化力の評価に適した個体サイズを調べたところ、採取した個体の67.3%を占める殻長19mmから25mmの個体では、溶解性タンパク量のばらつきが相対的に小さいことがわかった。ヤマトシジミの鰓のORACは、軟体部よりも約4倍大きく、都市下水に曝露した場合には、鰓の方が軟体部よりも抗酸化応答の継続性が高いことが明らかとなった。つまり、都市下水に対しては軟体部よりも鰓の方が総抗酸化力の応答を捉えやすいことが示された。 2)については、ヤマトシジミの摂餌実験、排泄実験、呼吸実験を行い、摂餌炭素量、排泄炭素量、呼吸による排出炭素量をTOC計のみで測定し、成長に利用可能な炭素量(成長力)を簡便に評価する手法を確立した。摂餌実験では、ヤマトシジミをプランクトンネットに入れることにより、擬糞の排出量を見積もったうえで、真の摂餌量を評価する有効性が示された。排泄実験では、細菌等による分解にともなう炭素消失を抑えるために、排泄物からの炭素溶出に留意して排泄量を評価した。呼吸実験では、サンプルにCO2が混入しないように流動パラフィンを重層してDIC測定を行い、呼吸量を評価した。本手法を5、10、20psuの塩分条件に曝したヤマトシジミに適用したところ、5psuでは成長力が相対的に大きく、20psuでは逆に小さく見積もられた。高塩分では成長が抑制するという既存の知見と対応が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画で予定していた二つの検討内容は問題なく実施することができ、順調に研究が進んでいる。また、審査付論文を二編公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度(二年目)は、当初の計画どおり以下の二つの内容を検討する。 1) 自然影響、人為影響に対するヤマトシジミの総抗酸化力、成長余力の関係評価 自然影響としては、ヤマトシジミの生育に感度が高いと報告されている水温、塩分、底質、人為影響としては、現地で問題となっている生活排水や農薬に着目する。室内で飼育したヤマトシジミを用いて、水槽内でそれぞれの環境ストレスを与え、ORACの応答や成長力をモニタリングする。その際、餌源となる珪藻の添加量を変えたり、暗条件で珪藻を数日間放置することにより生きている藻類と死滅した藻類の割合を変え、ヤマトシジミの餌源の量・質が総抗酸化力の応答にどのように関係するかも併せて評価する。 2) ヤマトシジミの総抗酸化力と細胞損傷の関係評価 ORAC法による総抗酸化力の評価だけでは、実際に活性酸素種から細胞を防御できているかどうかは判定できない。そこでコメットアッセイを実施する。ヤマトシジミのエラは粘着性があるので、細胞の回収率が低下する恐れがある。遠心分離等の分析条件を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため、繰り越した。H30年度に物品費として使用する。
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