研究課題/領域番号 |
17K06616
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 俊郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30335103)
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研究分担者 |
李 富生 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (10332686)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 溶存有機物 / 残留塩素 / スラッジ間隙水 / 送水過程 |
研究実績の概要 |
送配水系において残留塩素管理で対応が困難となった浄水場の水源から送水供給点までの各地点の水を対象として,昨年度から実施している水質の実態調査の結果を整理した。その結果,冬季と比べ夏季において原水中の有機物濃度は数割程度高いが,浄水処理以降は季節による有意な差はないことが分かった。特に着目していた送水管内での明確な有機物濃度の変化は見られなかった。昨年度の結果より着水井に返送される排水に含まれる浄水処理発生汚泥(スラッジ)間隙水について継続調査した結果,濃縮槽等での貯留過程でスラッジ間隙水中に溶存有機物が生じていること,その溶存有機物濃度は水温が高い時期に高く,スラッジに粉末活性炭が含まれる場合は低いこと等の特徴が分かった。スラッジの保管状況が間隙水中の溶存有機物の特徴が影響することが示唆されたため,実験室にて温度および酸素条件を変えたスラッジの貯留(培養)試験を実施した結果,好気条件下では3週間の培養においてもスラッジ間隙水中の有機物濃度の明確な変化はなかったが,嫌気条件下で特に高い温度(40℃)で培養した時は数日で濃度が大幅に上昇し,さらに好気条件でほとんど見られなかったタンパク様物質が高い濃度で含まれ,塩素消費速度も高かった。気温の高い時期にスラッジが長期間貯留されると間隙水中の特に塩素と反応性が高い成分を含む有機物が生じることが示唆された。このスラッジの貯留で発生する有機物の特徴を明らかにし,間隙水中の有機物が変化する要因について検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた,高塩素消費性をもつ有機物画分を多く含むスラッジについて現地調査と室内実験による実験を実施し,温度や酸素条件による影響について明らかにすることができた。一方,実験計画時で残留塩素管理に問題があった対象浄水場において前年度は問題が発生しなかったため,当該時期の現地調査(一昨年度からの継続)を実施できなかった。また原水となる水源の貯水池での底質調査も不足している。
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今後の研究の推進方策 |
まだ明確にできていない,水源や送水中の溶存有機物の特徴把握を調査を継続して把握するとともに,これまでの調査を整理して,水源から送水供給点までの溶存有機物の実態を明確にする。さらに,スラッジの貯留による有機物発生メカニズムを明らかにする実験を継続する。さらに特に嫌気状態でスラッジから発生する高塩素消費性有機物の特徴の把握と,各処理プロセスによる除去性について実験的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた有機物分画分析が予定よりも分析が進んでいないため,それに必要な試薬等の購入が出来ていなかったこと,学生アルバイトを含む研究補助者の採用ができなかったこと,分析において研究室所有のものを予定以上に活用できたこと,研究協力者である水道事業体による調査等で予定以上に協力が得られたことなどから使用額に差が生じた。次年度は,追加調査の実施とともに,計画に基づいた室内実験の実施において人的資源が必要で学生アルバイト等の使用が必要となる。またこれまでと同様に,分析に必要な薬品等の消耗品の購入,現地調査旅費,学会参加旅費に用いるとともに,論文作成等,成果のとりまとめと公表にも使用する。
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