安心安全な水道水供給のために浄水中の適切な残留塩素管理が求められており,浄水中に僅かながら残存する溶存有機物の由来や塩素との反応の特徴を把握することが水道水質管理上求められている。昨年度までに,処理で発生する排水を着水井に返送するクローズドシステムの浄水場を対象として,水源から送水供給点までの水中の溶存有機物の季節ごとの特徴を明らかにするとともに,汚泥間隙水中に原水にはほとんど含まれていない有機物画分があり,他の有機物と比べて残留塩素と高い反応性があることがわかった。今年度は,昨年度に続き高塩素消費溶存有機物の1つの発生源と考えられた汚泥濃縮・脱水過程における汚泥間隙水質に着目し,異なる時期に採取した性状の異なる浄水汚泥を対象として複数の培養実験を行い,いずれの汚泥においても嫌気条件においては塩素消費性が高いタンパク様物質が他の有機物成分よりも比較的多く発生し,一方好気条件においてはそれらの物質は発生せず,フミン様物質が生産されることが分かった。また,異なる条件での汚泥間隙水中を実験的に得て,それらを対象に粉末活性炭による水中の有機物除去性を把握するバッチ式の吸着実験を行ったところ,嫌気条件下で発生するタンパク様物質は他の有機物画分と比べて粉末活性炭による吸着除去されにくいことが明らかになった。クローズドシステムを採用している浄水場において,汚泥間隙水中の塩素消費性の高い有機物を浄水に残存させないためには,発生源対策,すなわち好気条件下での汚泥管理が求められることが示唆された。
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