研究課題/領域番号 |
17K06617
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
井上 隆信 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00184755)
|
研究分担者 |
横田 久里子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60383486)
嵯峨 慎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (10787667)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 富栄養化 / 生物利用可能態リン / 流出負荷 |
研究実績の概要 |
閉鎖性水域の富栄養化に関する環境基準である全リンの測定手法では、生物に利用可能な形態ではないリンも抽出されることから、生物利用可能態リンによる評価が必要である。 このため、環境水に適用でき、短時間で測定可能な生物利用可能態リンの分析手法について検討を行った。連続遠心分離を用いて懸濁物質を濃縮分離し、0.1N のNaOH 溶液でホーン型の超音波装置を用いた超音波抽出を行うことで、懸濁物質中の生物利用可能態リンを測定することが可能となった。溶存態リンは、生物利用可能態リンとみなすことができるため、溶存態リンと懸濁態の生物利用可能態リンの合計として、生物利用可能態リンの濃度を求めることができた。 また、この手法を用いて、農耕地河川と都市河川において平水時と降雨時に採取した試料の分析を行った。採取した試料の懸濁態リンに占める生物利用可能態リンの比率は、6から40%程度で、懸濁態リンの多くは非生物利用可能態リンであった。都市河川では、溶存態リンの比率が高いことから、生物利用可能態リンの占める比率は70%程度と農耕地河川より高くなった。また、懸濁態リンに占める生物利用可能態リンの比率は、都市河川の平水時で高くなった。農耕地河川では、降雨時に懸濁態リン濃度は高くなり、懸濁態の生物利用可能態リン濃度も高くなった。全りんと生物利用可能態リンの比率は、特に降雨時に大きく異なり、全リンから生物利用可能態リンを推定することは困難であり、生物利用可能態リンを直接測定することの重要性が明らかにった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度は、生物利用可能態リンの測定手法として、「①連続遠心分離を用いて懸濁物質を濃縮分離し、0.1N のNaOH 溶液で超音波抽出を行う。」「②GF/F を用いてろ過分離し、ろ紙ごと0.1N のNaOH 溶液で超音波抽出を行う。」「③ろ過を行わずに0.1N のNaOH 溶液になるように試水にNaOH を添加して、超音波抽出を行う。」の3つの検討を行うことにしていた。しかし、周波数の異なる超音波器が市販されていることがわかり、それらの比較検討も行うことにし、その準備を行った。また、ホーン型の超音波装置を用いて抽出を実施していたが、水槽型の超音波装置のほうが一度に多数の試料を処理することが可能なため、その有効性について検討を始めた。このため、前処理手法の確立には至らなかったが、30年度中には確立する予定である。一方、30年度に実施予定の河川流出負荷に関する研究は一部前倒しで実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
水槽型の超音波装置が、多数の試料を処理するには有効なため、この手法を中心にして、生物利用可能態リンの測定手法の確立を行う。また、AGP(Algal growth potential)試験を行い、抽出されたリンが生物利用可能態リンであることの検証を行う。 生物利用可能態リンの流出負荷量と流出源別負荷比率の把握と評価を行うために、降雨時の生物利用可能態リンの濃度変化や、懸濁物質の流出源と考えられる土壌の生物利用可能態リンの比率などの調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費として、500千円を計上していたが、他の外部資金などで賄うことができたため、29年度は使用しなかった。超音波抽出に関して、当初計画していた以外の手法も追加して検討することにしたため、30年度にこれらの実験の消耗品として利用する予定である。
|