富栄養化の指標のリンは、現在、湖沼や海域の環境基準や総量規制において、全リンが用いられている。全リンの一形態である懸濁態リンは、全てが生物に利用可能な形態でないことから、全リンではなく生物利用可能態リンによる評価が必要である。現在用いられている振とう抽出方法は、17時間の抽出時間が必要なことから、短時間で測定可能な分析手法を確立し、河川流出負荷特性について検討を行った。 超音波抽出法を用いることで、1分間の短時間で抽出が可能になった。また、ホーン型では、1サンプルずつしか抽出操作ができないことから、多試料を同時に抽出可能な超音波洗浄機を用いた方法の検討を行い、28kHz~45kHzの周波数で、ホーン型と同様の抽出濃度が得られることを確かめた。今年度は、懸濁物質を含んだ試料水を直接超音波抽出する手法について検討し、全リンの測定方法とほぼ同時間の作業で生物利用可能態リンの測定が可能なことを確かめた。このため、全リンに代わる指標としての有効性を確認でき、短時間で測定可能な生物利用可能態リンの分析手法を確立できた。 河川への流出源である流域の土壌中の生物利用可能態リンについて、これまでの農地や森林土壌に加えて、今年度は道路堆積物についても調査を行った。道路堆積物中の全リンに占める生物利用可能態リンの比率は低く、3年間の調査結果から、農地土壌の生物利用可能態リンの比率が高く、農地が重要な排出源であることがわかった。 河川水中の生物利用可能態リンの比率について、今年度は都市河川3河川、農耕地河川3河川の計6河川で調査を実施した。懸濁態リン中の生物利用可能態のリンの比率は、農耕地河川で高く平均で約24%であったのに対して、市街地河川のうち2河川は5%以下と低かった。3年間の調査から、懸濁物質中の生物利用可能態リンは主に農地から排出されていることが河川の調査結果でも明らかになった。
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