日本におけるレジオネラ症の報告数は年々増加傾向にあり,その制御・管理が求められている。給配水システムを含んだレジオネラ対策を考える上で,浄水処理システムでのレジオネラの挙動について把握することは重要な知見の一つとなりうる。浄水処理システムでは,レジオネラを含む細菌類は効果的に除去・不活化が行われているが,高度処理の一つとなる生物活性炭(BAC)は細菌類が増殖しやすい環境であり,レジオネラ自体が再増殖する可能性が考えられる。 そこで本研究では,有機物除去に効果的な生物活性炭(BAC)処理でのレジオネラの再増殖性についてレジオネラ感染症の原因菌であるLegionella pneumophilaを用いて評価し,高度浄水処理でのレジオネラ管理について考察を行った。 L. pneumophilaは存在状態に関わらず活性炭表面ではなく細孔内部に付着・蓄積することが確認された。長期増殖試験の結果より,培養可能状態であればBAC層内で再増殖し,排出水に放出される傾向が示された。一方VBNC状態では再増殖しないケースが確認され,BAC層への流入水中のレジオネラの生存状況がBAC層での再増殖に寄与することが示された。レジオネラ属菌の再増殖が生じる環境条件としては少なくともアメーバが生存しやすいバイオフィルムの形成が重要であることから,レジオネラ再増殖の可能性を管理する上でBAC処理とその前段処理前後で従属栄養細菌などによるモニタリングを行うことが重要であると考えられる。
|