研究課題/領域番号 |
17K06624
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鈴木 慎也 福岡大学, 工学部, 助教 (00341412)
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研究分担者 |
平田 修 福岡大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00461509)
小宮 哲平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20457451)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害廃棄物 / 埋立地 / 環境リスク / 混合廃棄物 / 浸出水 / 可燃性ガス / 土砂 / 溶出試験 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、迅速かつ円滑な災害廃棄物処理の実現とともに災害廃棄物を受け入れた埋立地が将来負の遺産にならないことを目指し、その環境リスクを定量的に評価し、リスク低減対策を提案することを目的としている。熊本地震によって被災した自治体の管理型処分場、公共関与による産業廃棄物管理型処分場を対象に、災害廃棄物の受入れ実態調査を行った。 文献調査ならびに処分場管理担当者にインタビューを行い、震災直後から現在に至るまでの災害廃棄物の埋立処分量の推移、受け入れた廃棄物の種類をまとめた。平成29年7月九州北部豪雨の発生に伴い、水害被災地の現地視察も合わせて実施する旨研究内容を変更したこともあり、研究計画調書に記載の「有害性評価」については、十分に実施できなかった。「用量―反応関係評価」の予備調査についても、OxiTop等による微生物培養器、振とう恒温水槽をもとに、その実験条件の最適化に関する検討を行うにとどめられた。 とは言え、調査結果として、家屋解体過程では一定量の土砂が廃棄物と混在した状態で二次仮置場に持ち込まれること、水害の場合には災害廃棄物のみならず、必然的に流木、土砂が大量に堆積し、災害廃棄物と混合することで災害廃棄物量を増大させること、流木と土砂の混合物の対応も必要で自治体担当者の頭を悩ませること、流木として二次仮置場に持ち込まれるものであっても、重量ベースで50%程度は土砂が占めていることが明らかにされた。 今後、埋立処分場に持ち込まられた廃棄物の環境リスク評価を中心に評価を行う予定であるが、同時に埋立廃棄物の埋め戻し材などへの活用の可能性について、再検討を進めることが有効と判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は処分場管理担当者に対するインタビューを中心に調査を進める予定であった。その結果、埋立廃棄物の種類・量の推移については、処分場によっては詳細なデータが得られている。 ただし、平成29年7月九州北部豪雨の発生により、その被災現場の視察を同時に進める必要があると判断し、予定を変更した。地震と水害による災害廃棄物対応の違い等の考察を加えることに変更し、現地視察を徹底することとした。その結果、家屋解体過程で一定量の土砂が廃棄物と混在した状態で二次仮置場に持ち込まれること、水害の場合には災害廃棄物のみならず、必然的に流木、土砂が大量に堆積し、災害廃棄物と混合することで災害廃棄物量を増大させること、流木と土砂の混合物の対応も必要となること、流木として二次仮置場に持ち込まれるものであっても、重量ベースで50%程度は土砂が占めていることが明らかにされた。 以上の経緯により、埋立廃棄物の種類・量の推移については、網羅的なデータ収集にまでは至っていない。特に、当初予定していた「有害性評価」、「用量―反応関係評価」の予備調査については、十分に進めることは出来なかった。OxiTop等による微生物培養器、振とう恒温水槽をもとに、その実験条件の最適化に関する検討を行うにとどめられた。とは言え、当初の想定よりも埋立処分場への土砂の搬入が多いと判断されることから、その埋立可否に対する性状判定ならびに埋め戻し材等への有効利用への検討が必要と判断された。
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今後の研究の推進方策 |
現場視察を通して得られた結果として、二次仮置場、埋立処分場に持ち込まれる災害廃棄物として「土砂」が極めて高い割合を示す点に注目するべきである。当初は埋立処分場に持ち込まられた廃棄物による環境リスク評価を中心に評価を行う予定であり、それ自体に変更予定はないものの、同時に埋立廃棄物の埋め戻し材などへの活用の可能性について再検討を進めることが有効と判断した。 特に土砂に関しては、本来は廃棄物に分類されるものではなく「災害副産物」などとして扱うべきものである。一部廃棄物の混入が見られること、被災の過程で何らかの汚染が生じる可能性などから埋立処分場に持ち込まれるケースが多い。本研究課題において、BMP試験やRA試験を行う予定であるが、それらの試験によって微生物活性の違いなどを考察することが可能と思われるため、これら汚染等による環境安全性への影響を総体的に評価することが可能になると思われる。 なお、一次仮置場における粗選別、二次仮置場における詳細選別の過程では、ほぼ不可避的に木片の小片が混入することが確認された。その埋立可否の判定については、文献調査によれば強熱減量の温度条件を変更するなどの提案がなされている。試料を目視する限りにおいては、メタン爆発等の危険性は低いと考えられるものの、窒素化合物を含む難分解性の有機汚濁成分を含有した浸出水が長期間にわたって流出する可能性が考えられた。溶出試験を実施した後、浸出水処理施設の微生物反応槽から植菌を行い、C-BODならびにN-BODの構成比を確認するなどが有効と思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更に伴い、試薬類、ガラス器具類などの必要数が減少したため。平成30年度に支出予定である。
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