研究実績の概要 |
本研究課題は、迅速かつ円滑な災害廃棄物処理の実現とともに災害廃棄物を受け入れた埋立地が将来負の遺産にならないことを目指している。その環境リスクを定量的に評価し、リスク低減対策を提案することを目的としている。 令和元年度は,平成30年度に実施したアンケート調査結果を踏まえ,埋立廃棄物の種類・量の推移についてのデータ,水質変化等がみられた埋立処分場を対象に「用量―反応関係評価」を行った。アンケート調査については送付件数517件に対し,231件の回答(有効回答率45%)が得られた。このうち,災害廃棄物の受け入れを行ったのは31件,水処理施設への影響があったのはその15%程度である。東日本大震災,熊本地震の廃棄物を受け入れた処分場で約20万t, 15万tなどが確認されたが,災害廃棄物の総埋立量に占める割合はそれぞれ6%及び17%であった。 埋立割合が比較的高い処分場においては、COD等の有機性汚濁物質の上昇が確認された。水害によって発生した災害廃棄物の受入量は比較的少量であり、浸出水水質と発生ガスには変化がなかったと回答があった。災害廃棄物受け入れ後に上昇傾向を示す項目はBOD, COD, SS, 塩化物イオン,電気伝導率,カルシウムイオンである。また,いずれの処分場でも埋立地ガス組成にはほぼ変化が見られていない。 その後、水質悪化の要因と予測される災害廃棄物を用いた溶出試験により、混合廃棄物の汚濁物質が濃度が低い一方、石膏ボード由来のCOD、硫酸イオン濃度が高いこと、焼却残渣由来のCOD、塩化物イオン濃度が高いことを確認した。ただし、TNの上昇要因については不明だった。なお、災害廃棄物受け入れと発生ガス・埋立地内温度には影響は確認できないが、水質悪化の影響については災害廃棄物埋立終了後も継続する可能性が示唆された。
|