研究課題/領域番号 |
17K06625
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 嘉孝 豊田工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (40413786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波 / 底泥 / スペクトル |
研究実績の概要 |
本研究では、止水域における底泥の厚さと粒径特性の把握について、広帯域の波(パルス波)を用いることで、短時間に広域で測定できる新手法の開発を目指す。研究が提案する新手法は水面から鉛直方向に超音波を照射し、反射したエコーの観測を行うことを想定している。さらに,実水域に堆積する底泥層は様々な大きさの粒径の底泥が重なって構成されている。そのため、水平方向実験により、底質層を通過する際に得られるエコー特性の把握を行う。上記の実験により得られた波形解析には,波形情報をフーリエ変換によって周波数分解し、スペクトルにした結果を用いる。 平成29年度までの研究では,ガラスビーズを用いた実験を行い,超音波を鉛直方向実験および水平方向実験より,高周波帯と低周波帯で粒径とエコー強度との関係があることがわかった。 平成30年度の研究では,ガラスビーズを層状に配置した実験と,試料として池に堆積している底泥を用いて実験を行った。その結果,各粒径でエコー観測の時間から算出した厚さと実際に堆積している厚さを比較すると,誤差が2%以内であることがわかった。 以上から,2層目を観測したエコーにより,表層厚推定が可能であることがわかった。このことより,河川や湖沼など水底距離が把握できていない場所でも,超音波を使う事で表層厚の観測が可能であると考えた。次に,底泥を用いた実験から,各粒径によりエコー強度が異なり,粒径が大きくなるにつれ高周波成分が減衰していることがわかった。以上の実験結果より,超音波の透過現象を観察する水平方向実験では,底泥でもガラスビーズと同様に,粒径ごとのエコー特性を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画としては,Phase1のstep3と,Phase2のstep4を予定していた。 まずStep3では,これまでの単一粒径でなく,層状に配置したビーズの波長特性を把握する事を目的としている。具体的には,多層状に粒径の異なるビーズを配置し,多層状でも層厚が測定できる手法を確立することである。本実験手法は,堆積させた試料に向けて水面から超音波を照射し,表層の表面と2層目の表面にて発現したそれぞれのエコー観測時間を測定した。表層には粒径30μmのガラスビーズ,2層目にはそれぞれ70,100,400,800μmのガラスビーズを用いた。この結果,各粒径でエコー観測の時間から算出した厚さと実際に堆積している厚さを比較すると,誤差が2%以内であることがわかった。 以上から,2層目を観測したエコーにより,表層厚推定が可能であることがわかった。このことより,河川や湖沼など水底距離が把握できていない場所でも,超音波を使う事で表層厚の観測が可能であると考える。 次に,Step4において,ガラスビーズで得られた観測結果が,湖沼の水底に堆積している底泥の適用可能性について調査することを目的としている。具体的には,湖沼より底泥を採取し,ふるいにより分画した試料毎に水平方向の超音波照射実験を行う。実験手法としては,池の水底に堆積している底泥を採取し,250,100,75,63,45μmのふるいで分画した。その試料に対し水平方向に中心波長800kHzの超音波を照射し,そのエコーを受信し,解析プログラムによりフーリエ変換による周波数スペクトルを生成した。その結果,各粒径によりエコー強度が異なり,粒径が大きくなるにつれ高周波成分が減衰していることがわかった。以上の実験結果より,超音波の透過現象を観察する水平方向実験では,底泥でもガラスビーズと同様に,粒径ごとのエコー特性を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年では,Phase2のStep5と6,およびPhase3の研究を予定している。 Step5においては,湖沼から採取し粒径毎に分画した底泥を,Phase1のStep 2と同様に鉛直方向での超音波照射実験を行う。ここでは,Step4と同様に,底泥厚が測定できる分解能を把握する。次にStep6では,採取した底質を多層状に配置し,超音波照射による底泥厚の測定方法を確立する。このStep5と6において用いる底泥は,Step4で用いたものとし,その分画サイズもStep4と同様に,250μm,100μm,75μm,63μm,45μmとする。Step6における多層配置実験では,Step3の実験方法と同様とすることで,ガラスビーズで得られた結果との違いを検証する。 そしてPhase3においては,実水域での超音波エコーによる間接的な層厚・底質測定技術の開発を目的として研究を行う。具体的には,ボートで湖上から鉛直方向に超音波照射を行い,エコーを観測し,Step 6でえられたエコーと底質厚の関係式から底質厚を求める。その際,コアサンプリングを行い,実際の底質厚を把握する。このステップでは,ボートの購入費用,機器の防水対策費用,コアサンプリング費用などの調査費用を計上する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では,昨年度からの懸案である機器のデジタル化に関する費用が多く発生すると考え予算計上を行ったが,その費用が多くかからなかった。また,解析ソフトについても昨年度購入することが無かったので,その予算を次年度の予算に充てる予定である。
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