研究実績の概要 |
平成30年度までの研究では,基礎的性状の把握として,室内において超音波を鉛直方向実験および水平方向に照射する実験により,高周波帯と低周波帯で粒径とエコー強度とに関係があることを確認した。さらに,ガラスビーズを層状に配置した実験より,複数層でも層厚推定が可能であることが明らかになった。 令和元年度の研究では,湖沼から採取した底泥について,鉛直方向での超音波照射実験を行った。採取した底泥は,2000μm,800μm,250μm,100μm,75μm,63μm,45μmのふるいで分画した。それぞれの底泥に対し,鉛直に超音波を照射し,えられたエコーを解析した結果,すべての粒径で0.25MHzと0.60MHz付近でパワースペクトルのピークが確認された。さらに,その2つのピーク値を粒径毎に比較した結果,粒径が大きくなるほどパワースペクトルのピーク値は小さくなることが確認された。この結果は,ガラスビースの結果と同様の傾向を示した。 次に,実水域での超音波エコーによる間接的な層厚・底質測定技術の開発を目的として研究を行った。実験方法としては,800kHz,φ40の振動子を水面に設置し,水深約1.1mに対して,超音波を照射し,エコーの観測を行った。その結果,エコーの観測時間より,水深を5%以内で推定できることが確認された。そのため,湖沼の実断面形状が把握できていれば,今回の手法で底泥厚が算出できることが明らかとなった。今回屋外で行った底泥層は約40cmであり,超音波が底泥内で減衰してしまったため,湖底部からのエコーを観測することはできなかった。また,底泥の採取により,底泥質(密度など)が層状になっていることは確認できたが,超音波が減衰したことにより,実験室でえられたような粒状特性の解析までには至らなかった。
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