研究課題/領域番号 |
17K06626
|
研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山田 真義 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 准教授 (80469593)
|
研究分担者 |
黒田 恭平 都城工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50783213)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | メタン発酵 / UASB-DHSシステム / COD容積負荷 |
研究実績の概要 |
本研究では、醤油製造廃水を処理可能な低温(20 ℃)UASB反応器と常温DHS反応器を組み合わせた高効率廃水処理システムの開発を目的として、醤油製造実廃水の連続処理実験を行い、その処理性能の評価を行った。UASB反応器の液容積及びDHS反応器のスポンジ容積はそれぞれ7.0L、20.8Lとした。UASB反応器の槽内は20℃に制御し、DHS反応器は無加温とした。UASB反応器の植種汚泥は低温条件(20 ℃)で模擬醤油製造廃水を塩濃度約 3.5gNa+/L、流入COD濃度6,500±900mgCOD/L及びUASB反応器のCOD容積負荷26±3.6kgCOD/m3/dの条件下において87±7%のCOD除去率を達成しているUASB反応器のグラニュール汚泥を用い、DHS反応器には下水処理場の返送汚泥を用いた。本研究では、実際の醤油製造工場から発生した醤油製造廃水を水道水で約25-16倍に希釈して供給COD濃度を調整し使用した。醤油製造廃水はpH4.8程度の酸性廃水であることから、メタン発酵の至適pH範囲6.5-8.2の範囲内に調整するために、供給廃水のpHを24%濃度のNaOHを用いてpHが6.5以上になるように適宜投入した。連続処理実験の結果より、本システムは、UASB反応器におけるCOD容積負荷29±5.0kgCOD/m3/d、流入COD濃度7,800±940mgCOD/L、流入Na+濃度約4g/Lの条件下で、UASB反応器及びDHS反応器でのCOD除去率はそれぞれ、72±4.1%、81±1.3%であった。また、一時的にUASB反応器でのCOD除去率が低下してもDHS反応器による安定的な後段処理が可能であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
醤油製造実廃水の連続処理実験では、UASB反応器におけるCOD容積負荷29±5.0kgCOD/m3/d、流入COD濃度7,800±940mgCOD/L、流入Na+濃度約4g/Lの条件下で、UASB反応器及びDHS反応器でのCOD除去率はそれぞれ、72±4.1%、81±1.3%であったことなど連続処理実験データは取得できている。また、連続処理実験中の各反応器から微生物サンプルを取得し、UASB及びDHS反応器内の微生物の解析等を行っている。また、Na+が上昇した場合におけるUASB反応器内保持汚泥の性状把握のため、Na+存在環境下におけるUASB反応器内汚泥のメタン生成活性試験を行い、データの取得や校内に設置されている地下水ポンプの水温を定期的に測定し、反応器の加温に使用することが可能か検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
醤油製造過程の珪藻土ろ過から排出される、透明度が低く、有機物濃度(約100,000 mgCOD/L以上)および塩濃度が高い、特有の臭いを発する有機性廃水(実廃水)に対して、温度管理に地下水を利用し、20℃の低温制御したUASB-DHSシステムによる適正な運転管理方法を連続処理により確立する。低温UASB-DHSシステムの連続処理特性を評価するために毎日、水温、pHやECなどを測定し、システムの運転状態を確認する。また、週に2回、水質分析(SS、BOD、COD、アニオン・カチオン濃度、窒素化合物、硫黄化合物、酢酸・プロピオン酸など有機酸、アミノ酸)を行い、処理状況を把握する。スタートアップ、処理の安定・不安定時のUASB-DHS保持汚泥の16S rRNA/16S rDNA解析では、提案したUASB-DHSシステムのスタートアップ時、処理の安定・不安定時における保持汚泥の16S rRNA/16S rDNA解析を行うことで、保持汚泥中の微生物生態だけでなく、各運転性能が変化した際に生理活性を高く維持している微生物群を特定する。具体的には、連続処理データを基にして、UASB-DHSシステムの処理性能に変化が現れた際に保持汚泥を採取し、-20℃、-80℃、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)用の固定を行う。メタン生成活性試験と保持微生物のrRNA発現解析による、各運転条件下で生理活性の高い微生物群の特定は、メタン生成活性試験と共に16S rRNA解析を行うことで、メタン生成過程において重要な微生物群を特定する。
|